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2021.05.18

みんなで忖度やめよう|常任理事/総合政策学部教授 國領 二郎

日々のニュースを見たりしながら、この国や自分の組織ののろまさや優柔不断さを憂えたりするわけだが、当然のように自分もその一員なわけである。人のことを言う前に自分のことを考えてみる。すると、自分が関係することに関して勝手に事を進められたと怒ってみたり、何かやりたいと許諾を求められた時に影響がありそうな人に確かめるから待ってと言いながらずるずると時間を経過させてしまったり、あの人が怒るから遠慮しとこうとか言って身動きとれないようにしてしまったり、空気を読みすぎて身動き出来なかったりすることも多いことに気づく。先輩がやったことを改める時に恥をかかせてはいけないなどと考えて切れ味の悪い対応になったりすることもある。日本中でこれをやっているから、とても鈍重な組織になるのだ。

卑下しすぎるのもかえって良くないので日本式のよいことも書いておくと、そうやって多くの関係者に根回しをして、皆の同意をとりつけてから先を進むことで、決めた後は物事が遺漏なく進む面があるのだろうと思う。ものづくりなどにおいては、役割分担(アーキテクチャ)を決めたら後は自主性を尊重するいわゆる組み合わせ型のやり方に対して、日本では全体をみんなで調整するすり合わせ型が得意というのは昔から言われていることだ。それが素晴らしい成果をあげている面がある。未だに日本が高機能部品などで強みを見せているのは、部品内で徹底的にすり合わせをやっているからと言っていいだろう。

ただ、もうそれだけでは無理になってきていると思う。忖度とすり合わせの組織運営をしないといけないので、会議は対面にしないと空気が伝わらず、沢山会議をしないといけないので、五時以降の会議が増えていく。国会では、オンラインにできる気配が全く見えないし、夜の会合が出来なくて困っている。それらはコロナをワクチンで抑え込んで元へ戻せばいい話ではなくて、地方で子育て最中の方に政治に直接参加してもらうために、責任の分担と所在をはっきりさせ、会議の必要を減らした上でオンライン会議を中心にやるべき時代が来ているのだと思う。

極端かつ単純な二分法で語ってしまったのだが、本当は第三の道を行くべきなのだろうとも思う。せっかくオンラインでそれなりの情報共有は今までよりも広い範囲で柔軟にできるようになったのだから、それぞれの責任の範囲で何を考えているかをお互いに検討過程から開示しながら、意見が対立しているところのみ会議をするような進め方なのだろう。

なんてことを書きながら、今晩もすり合わせ会議だ。

國領 二郎 慶應義塾常任理事 / 総合政策学部教授 プロフィール