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2020.05.18

We're Cooking a Better World|伊作 太一さん(2015年環境卒、2017年政メ修了)

伊作 太一さん

株式会社コークッキング 取締役
一般社団法人日本スローフード協会 理事

2015年環境情報学部 卒業 / 2017年政策・メディア研究科 修了

 

IMG_8131.jpgSFCで過ごした学生時代、私にとっての一番の遊びは「料理」でした。
湘南台は便利で平和な町でしたが、大学生にとっては少々物足りません。街に出るには一時間近くかかるし、電車賃もかかってしまう。江ノ島は好きだけど、毎日行くものでもない。そんな中、日々の学生生活に彩りを与えてくれたのが料理でした。当時、授業やサークルが終われば、仲間たちと近所のスーパーに繰り出し、よなよなキッチンで無茶をしていました。

友人たちとの料理の場はその後「コークッキング」と名付けられ、私の研究としてプロジェクト化されます。研究会は井庭研。創造性をテーマとして扱う研究会です。食を切り口に人々の創造性をどう支援できるか、今日まで続く探究の始まりでした。

私は現在「株式会社コークッキング」というスタートアップで取締役をしています。修士1年の冬、学部時代の先輩で、当時の料理仲間でもあった川越一磨と二人で立ち上げた会社です。SFC時代の活動・研究から名前を継承した当社では、今も変わらず食や料理で世の中をクリエイティブにすることをミッションとしています。

振り返れば、SFCで培った経験はすべてが現在の活動に活きています。SFCでの学びはプロジェクトベースで進むのが良いところでした。冊子を制作してORFに出展したり、論文を執筆して海外の学会で発表をしたり...正解がなくアプローチもリニアーではないスタイルの学びが、自分には合っていました。研究として知のフロンティアを開拓している感覚も、一種の興奮を覚えるものでした。スタートアップでは日々状況が変化し、誰もやったことのないことへの挑戦が求められます。そこで求められる臨機応変な問題解決力は、SFCでの研究活動と本質的に似通うものがあります。

現在コークッキングでは「TABETE(タベテ)」という、食品ロスの問題に取り組むサービスを展開しています。食品ロスの問題は複雑で、各プレイヤーがそれぞれの「正義」を追い求めた結果、構造的に生まれてしまします。全員に責任があると同時に、特定の悪者が存在するわけでもありません。ただ問題だと叫び良い行動を呼びかけるだけでは、生活者は疲弊してしまいます。本当のチェンジのために、日々の生活やビジネスの中で無理なく続けられる持続可能なしくみをつくらなければいけません。

TABETEの挑戦が評価され、この度、Forbes誌が主催する「Forbes 30 Under 30 Asia 2020」に、共同創業者で代表取締役の川越と二人で選出していただきました。ただサービスはまだ発展期にあり、何より本当のチェンジにはまだまだ及びません。多様で持続可能な食のシステムを目指して、責任のある生産と消費を応援する。日々の暮らしの選択を重ねる中で、自分の生き方を創造的にデザインできる人を増やす。SFC時代に端点を持つその想いを忘れず、仲間とともにこの先も未来につなげていきたいと思います。