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2020.05.18

答えのない問いと向き合い続ける|川越 一磨さん(2014年総合卒業)

川越 一磨さん

株式会社コークッキング代表取締役CEO/
一般社団法人日本スローフード協会 理事/一般社団法人食品ロス削減推進機構 理事

2014年総合政策学部 卒業

 

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私は、小学生のころからとにかく食べることが好きでした。両親共働きであったため、家でササッと料理をしてみることが多くありました。中学高校に進学しても、友人と超大盛りのお店を探して行ってみたり、おいしいラーメンを探しに行ったり 。

そんな中、高校在学中に 2回 フランスに短期留学したのですが、パリの和食レストランのクオリティに衝撃を受けたことを、今でも鮮明に覚えています。大きめの酢飯おにぎりにサーモンの刺し身が1枚ペロっと乗っているそれは、間違いなく寿司と称して販売されていたのです。日本食が適切に世界で伝わっていないことに悲しみを覚え、日本食の伝道師となるべくSFCへの進学を希望してAOで入学させていただきました。

現在は、食のサステナビリティをどうつくるか、食の未来をどう明るくすることができるかを考え、特に食品ロスの課題解決に向けて事業を行っていますが、問題発見解決のプロセスについて答えのない問いとの向き合い方はSFCで培われたものです。高校までの一問一答の勉強の世界はもちろん重要ですが、社会の課題はより複雑化しており、答えが一つに絞られることはほぼないと言っていいでしょう。SFCのようなグループワークやレポートなどの正解のないアウトプットが求められる環境は、まさに貴重な実学の場であると考えています。

特に食の世界においては、正解というものが存在しません。ある側面から見れば正しそうなことでも、別の切り口から見ればそれは正しくないということは往々にして存在します。例えば、一時期話題になった菜食主義者・ベジタリアン。 環境問題を考える上で牛肉を筆頭に畜産業は水資源を大量に消費するという点で、野菜中心の食生活をすると環境保全につながるということが言えます。一方で、栄養学的な見地からみればタンパク質やビタミンB1・B2などを効率的に取れる動物性食品を抜くことは、気づかぬうちに栄養失調となるリスクもあります。こうした側面を鑑みると菜食主義者・ベジタリアンと呼ばれる食事の摂り方を一概には推奨できないという考えの人もいるでしょう。世の中の事象は、どちらも間違っていないことが多いのです。
 
これからの世の中は更に、このような答えのない混沌とした状態が加速していくと考えています。様々な問いが溢れる世界で、自分なりの仮説をつくり、検証をするというサイクルを回し続けられるかが、とても重要な力になっていくでしょう。ぜひ自分なりの興味分野を見つけて、たくさんの問いと向き合ってみてください。

SFCはまさに、切磋琢磨しながら答えのない問いとの向き合い方をトレーニングするには最適の環境にあります。今回私と共同創業者でSFC出身の伊作は二人で、Forbes誌が主催する「Forbes 30 Under 30 Asia 2020」に選出していただきました。こんな大変光栄な賞を戴けたことは嬉しい限りですが、私一人では到底力不足で、仲間がいてこその受賞であったと考えています。私たちが解こうとしている問いはまだまだ解決したわけではありませんので、かけがえのない仲間とこれからも向き合っていこうと思います。

みなさんも、SFCでかけがえのない仲間をみつけ、共に熱く未来を語り合い、これからの社会をより豊かで幸せなものにしていくことができます。ぜひ、存分にSFCを活用してワクワクするような未来をつくっていきましょう。