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2015.09.16

全身麻痺からプロダンサー・全米初プロ車いす社交ダンスカンパニー設立 | 浜本まり紗さん(2007年環境卒、2009年政メ修了)

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浜本まり紗さん
プロダンサー・振付家・女優・スピーカー
米国NPO法人 Infinite Flow – A Wheelchair Dance Company 代表
2007年 環境情報学部卒業 
2009年 大学院政策・メディア研究科修士課程修了
 
 
 
 
 
 米国カリフォルニア州、アーバイン市出身。日系四世。
 踊り始めたのは6歳。身体を音楽に合わせて踊ることが大好きだった。ニューヨーク・シティ・バレエ団の華麗な美に憧れ、中高では学業に励むと同時プロ・バレリーナの道を目指し、一流バレエ学校に在学していた時期もあったが、バレリーナのキャリアには芽が出なく悩み、踊りから離れる。
 
 SFC環境情報学部に入学したのは2003年。ダンスの世界から方向転換する目的も含めて日本の大学を志望したつもり。しかし、ダンスは日々の生活から消えなかった。SFCでは、スポーツバイオメカニクスを仰木研究室で学び、クラシック・バレエの動作分析に力を入れる 。卒業制作「Balance in Ballet: クラシック・バレエ動作による運動力学電子教材ピッ ケ・アラベスクを例に」はSFC認知身体クラスター 卒業制作最優秀賞にも選ばれ、International Association for Dance Medicine and Science(国際ダンス医科学学会)の学生委員長も3年つとめた。また、自身の踊り心も復活しプロダンサーをひそかに目指しつづけ、都心でダンサーとして足を運んだ。その活動の中では、指揮者小澤征爾や、振付家平山素子・山崎広太、など日本の著名アーティストの公演に出演。貴重な舞台経験を積み重ねたと同時にダンスを通じて日本人としてのアイデンティティーを模索した。
 
 日本に移住して3年半(学部4年生の時)、そんな充実した学生生活を送る中2006年7月26日、その全てが崩れた。東京のダンスクラスでいつものように練習していた中、突然肘がしびれ始め、数秒後床に倒れる。気がついたら、四肢が動かなく、首から下の感覚が無くなっていた。「脊髄の動脈がふさがって起きる非常にまれな病気、脊髄梗塞です。再び歩くことは出来ないかもしれません。」と翌日医師から診断を聞いた時には、正直自分の人生は終わりだと思った。歩けない=踊れない。ダンスが無い人生は考えられなかった。
 

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しかし、病気を救ったのはダンスそのものだった。寝たきりの状態でも踊る自分をイメージし続けた。「たとえ歩けなくても、踊り続けたい。」リハビリでのちょっとした動き、例えば膝を曲げる単純な動作でもただ曲げるのではなく、バレエを踊る意識を持って曲げ繰り返した 。その結果、奇跡的に9月半ばに退院した時には、完全に歩くことが出来ていた。大学の最終学期にも出席し、再び踊れる喜びを感じながらもダンスフロアに近づくと動悸や息切れに襲われた。いつ起きるか分からない再発に不安を感じ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、再び数年ダンスから距離を置いた。
 しかし、ダンスに対する病的恐怖症を抱えながらも、政策・メディア研究科修士課程在籍中の研究は全てダンスをテーマに実行した。修士論文は渡辺靖先生の指導により「日本の大学におけるダンス・プログラム:2フェーズの歴史と第3フェーズの出現」を発表した。病気を救ったのはダンス。ダンスのパワーを信じ続けた。
 
 2010年1月、 社交ダンス・サルサダンスと出会い、全てが変わった。言語を使わずにパートナーとコネクトする面白さにはまり、また大衆を相手にダンスを教えることに魅力を感じ、東京の社交ダンス教室で修行し始め 、ダンサーの夢を再度追った。
 社交ダンスと出会ってから5年、現在ロスを拠点にプロダンサーとして活発に活動、踊れる毎日に感謝している。夢はいつの間にか実現していたとはいえ、ダンサーとして達成したいことはまだ多々ある。

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 そして、今年2015年1月、全米初となるプロの車いす社交ダンスカンパニー非営利NPO法人「Infinite Flow – A Wheelchair Dance Company」を設立。歩けない方達も含め、全ての人にダンスの素晴らしさとパワーを知って頂きたい願いから、Infinite Flow を設立し、 短い半年の間でも活動のインパクトは非常に大きいと言える。
Infinite Flowは今後
(1)地域に密着したクラスやワークショップの開催
(2)地域普及のための教員養成
(3)一般の人に活動を知ってもらうためのパフォーマンス
の3本柱を基盤に活動を広めて行く予定です。
 今後は、アーティストとして米国での活動を広げ続けると同時に、日本にも活動を少しずつ発信していく予定です。
 
 

学生への一言:

If you claim your destiny, nothing can stand in your way.