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2015.06.08

「25年を迎えたAO入試」|河添 健(総合政策学部長)

 昨年のOpen Research Forum 2014 で安西祐一郎元塾長 (独立行政法人日本学術振興会理事長) に慶應義塾の未来や大学の理想について話し合うセッションに参加していただいた。教育改革に関する熱い思いを伺うと共に、「SFCのアドバンテージはもうなくなるよ」との一言が忘れられない。その後、12月に中央教育審議会は『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』(答申)を発表した。副題にあるように、すべての若者が夢や目標を芽吹かせるための教育改革である。すばらしい答申であり、SFCが25年間目差してきた教育理念とも合致する。その意味で、SFCのアドバンテージがなくなることは大いに喜ばしいことであろう。しかし、それから半年、大学入試センター試験を廃止し、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入する話やいわゆるAO入試の導入などの入試改革の話が先行してしまい、高大接続や大学教育の質的転換の話が後手に回っているように感じ、少々不安である。

答申が発表されて以降、SFCのAO入試についてインタビューを受ける機会が多くなった。入試については詳しく公言することはできないが、常に次の点を強調している。各大学は教育理念に基づきカリキュラムを作り、そこで育てる学生を選抜する。SFCでは問題発見・解決型の教育を理念とし、多様で横断的なアクティブ・ラーニングを主体としたカリキュラムをつくっている。AO入試では、その仕組みを理解し、強い問題意識を持ち、その解決に向けて一歩でも多く歩みだした人物を選抜している。したがって評価は各個人を総合的に評価する。このように説明すると、最初の質問は「入試の公平性はどのように保つのですか?」が圧倒的に多い。回答は「点数化した公平性よりは、各先生方が、研究会(ゼミ)の学生にしたいか、が大事な基準ですね。25年間、5000人の志願者を評価すればこの基準はぶれません」となる。質問はどうしても選抜方法に関するものが多くなるが、やはりAO入試の本質を理解されているのかが不安になることがある。SFCでは25%弱の学生をAO入試で受け入れ、その個性を伸ばすカリキュラムや奨学制度を用意している。そして何よりもすべての教職員がAO生を含めた問題意識の高い学生と勉学を共有し、それによりキャンパスの多様性が生まれている。このようなダイナミックなキャンパス設計がないとAO入試の意味がない。既存の入試制度の一部を変えて、小人数をAO入試で受け入れても、その効果は期待できないであろう。

 「SFCのアドバンテージはもうなくなるよ」といった状況はまだ遠い先のようにも感じる。しかし教育改革、教育界を先導するキャンパスとしては、常にアドバンテージを創生しなくてはならない。みなさん、世界の教育を先導するグローバル・キャンパスを目差しましょう。