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2015.05.08

「建て替える文化」|國領 二郎(湘南藤沢キャンパス担当常任理事)

国立競技場やホテル・オークラなど、建て替えを巡って賛否両論が交わされている。自分の身近なところでは、今、渋谷駅が大規模な建て替えをやっていて、大変な状態になっている。昨年は高校入学以来40年も乗り換えに使い、慣れているはずの渋谷駅で通路が頻繁に変わるので(←言い訳)、何と、田園都市線を東横線と間違えて入学式に遅刻するという大失態を演じてしまった(ごめんなさい...)。
 面倒をかえりみず建て替えするのは日本の文化と言ってもいいのだろう。欧米などでは石で作った建物をずっと使うのに、日本は立て替えるのを当たり前のように思っている。極め付けが伊勢神宮の式年遷宮で20年に一度、全ての社殿を新しく立てて引っ越している。西洋文明の神殿などでは考えられない発想なのではないか。恐らくは、理由のある話で、湿度高く、天災も多くて、建物が傷みやすい風土の中で育ってきたのだろう。何よりも新しいことを好む風潮があって、パチンコ屋さんなどは、台を入れ替えるだけで、新装「開店」と大々的に宣伝している。
 どんどん新しくしていながら、守るものはしつこく守っている。象徴的なのは、20年にいっぺん立て替えるという風習を1300年も続けている。伝統を守りながら、常に新陳代謝を続けるという考え方は、成熟と若さを兼ね備える秀逸なモデルで、もっと世界に発信していい日本の知恵のように思う。
 ちなみに未来創造塾を木造で建てようという話がいま進みつつある。木造にすると、コンクリートほど耐久性がないのではないかという意見もあったのだが、学生と一緒になって考えて造れるという楽しさが生まれることがわかってきた。そして、建て替えのサイクルがコンクリートで造るよりも早くめぐってくる。正直に告白すると、当初はコンクリート製を考えていたのだが、オリンピックのせいで、想定をはるかに超えた価格になることが分かって、発想の転換をはかってこんな展開になった。でもこれは良い機会だ。日本の伝統を生かしつつ、大学キャンパスの作り方に一大革新をもたらしうる取り組みになると期待している。