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2014.04.01

大木聖子研究会

「人の命を救いたい」という思いを防災に関する
実践研究を通して、カタチにする。

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<研究会名>
環境情報学部 准教授
大木 聖子
専門分野:地震学 災害情報 防災教育 災害科学コミュニケーション

「理不尽な死をなくしたい」という思いがあれば、
様々な切り口で防災について研究できる。

自然災害からいかに人の命を守るか−−−研究会では、学生それぞれの興味・関心から、さまざまな切り口で防災についての研究を行い、プロジェクトの制約はありません。日本にいる外国人が震災に遭遇した時に必要な情報を調査し、研究している学生がいます。また遊びの中で、防災を学べる幼児向けの授業を考えたり、得意のデザインを活かして防災グッズを制作したり、ITに強い学生は、防災に役立つアプリを開発しています。言語から研究にアプローチしている学生は、被災者の体験を伝承として活かすために、言語について取り組んでいる研究会にも加わり、自分の研究テーマを追究しています。防災は学際的なものなので、文理問わず、幅広い学問が学べるのは、SFCの強みだと思います。

この研究会は、2013年春にスタートしたばかりで、「理不尽な死をなくしたい」という思いがあれば、個人でもグループでも研究を進められます。あるとき私は研究会で言ったのです。「震災で大きな被害を経験した日本は防災の先進国。SFCから日本の防災を変えることは、世界の防災を変えることができるんだ」。その言葉は、学生たちの心に火をつけたようで、高い意欲をもって、研究テーマに取り組んでいます。

誰も答えを知らない、
結論のない研究に取り組んでいることを実感する。

研究会では、最初の半年間は、私が防災に関連するさまざまな情報や事例などについて講義をしました。そこで学んだことを現場で活かせるように、その後はフィールドワークに取り組み、昨年の夏には東北の被災地に学生たちと赴きました。この写真は、そのフィールドワークの一コマです。高台から見た震災後の光景が,学生たちの心に深く刻まれたことでしょう。
秋学期には、これまでのフィールドワークで学んだことを、グループワークで発表することに時間を費やしました。すると、学生は考えていくうちに、答えがないということに、気づいてくるわけです。
学生たちにとっては、結論のない後味の悪い発表にはなるのですが、これらの経験を通して、自分たちが答えのない問題に取り組んでいることを改めて認識するわけです。それからは、『苦悩は苦悩のまま発表する』というのが、いつしか学生たちのキーワードになっていて、何かあるとそこに立ち返るようになりました。

そこから、学生たちは、国民全員を助けることは無理でも、小さい子どもたちや留学生など、身近なことから考えるようになっていきます。自分の関心事も少しずつわかってきて、今の研究テーマにつながるようになりました。

自分たちの研究活動は、社会を動かす力がある。

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研究会に在籍している学生たちには、誰かが救えること、自分が貢献できることを、自分の研究を通じて実感してほしい。失敗しても、成功しても、その体験は社会できっと役に立つはずです。今研究会のメンバーが先生となって、藤沢市の子どもたちに防災に関する授業を教えています。この継続的な活動が認められて、藤沢市の教育委員会に初めて防災研究部会というのが立ち上がりました。自治体の仕組みは、なかなか変わらないものだと思うのですが、学生たちの活動が、社会を一歩動かしたわけです。そのことを学生たちに伝えたら、「鳥肌が立ちました」と言っていて、感激していましたが、そういう体験を学生のうちにもっと経験してほしいと思います。SFCなら、日本そして世界の防災を変えることは、決して夢では終わりません。