次田 尚弘さん
西日本電信電話株式会社
2010年 環境情報学部卒業
SFCとの出会いは私が12歳の時。NHK課外授業ようこそ先輩の番組収録で小学校を訪問された竹中平蔵教授にSFCについてうかがった。SFCで学んでみたい。本当に自分が学びたいことは何かを突き詰めようと、高校を2ヶ月で中退、直後に大検を取り、高校3年生の年齢でSFCに入学した。高校中退後、SFC入学までの自由な2年間は、今後の自身の礎を理解するうえで極めて重要な期間だった。
SFCに入学。周りの学生は全員が年上の先輩。年の差で負けまいと授業に全力で取り組んだ。履修した浅野史郎教授の地方自治論に影響を受け、地元・和歌山県を見つめ直した。当時、和歌山県では県知事の逮捕事件の真っ只中。地元では「何の取り柄もない恥ずかしい県」と後ろ向きの人が多くなった。
県外に出た者として、鳥の目で和歌山県の良いところを見つけ、虫の目で深堀し、それを地元で発信、地元を元気にしようと、飯盛義徳研究室に所属し「わかやまさんぽみちプロジェクト」を立ち上げた。「情報通信やメディアを効果的に使い、人と人、人と情報を繋ぐ研究をしたい」という入学時の想いのもと、自治体や報道機関など多様な主体を巻き込んだ、地域活性化の社会実験は、SFC STUDENT AWARDの2年連続受賞をはじめ、電気通信財団賞や近畿コミュニティ放送賞を受賞。和歌山県知事、和歌山市長からそれぞれ観光大使を委嘱されるなど、学内外で高い評価、称賛をいただくことができた。竹中教授との再開も叶った。
課題に対する多角的なアプローチ、フィールドワーク重視というSFCの精神は、社会人となった今も活かされている。卒業後、NTT西日本に入社。市町村や学校法人へのソリューションを行う公共系SEとして広島支店に着任。教育現場や過疎地域の情報化など、あらゆる課題に通信を使って解決しようと挑むなかで、情報通信の知識やテクニカルスキルに加えた、別視点のソーシャルな視点を磨くことが必要だと感じた。
そこで始めたのが、地域活性化につながるボランティア活動。休日を利用し全国のまちづくりの優良事例を研究・視察し、その内容をコラムとして掲載する地方新聞の連載コーナーは4年目に入った。同郷の竹中教授と一緒に、アートで地域の文化振興を目指すNPO法人を立ち上げ、世界遺産・熊野でのコンサート、講演会の開催や、日系ブラジル人との交流を積極的に実施。
また、慶應大学の大先輩、両備ホールディングスの小嶋光信会長(和歌山電鉄社長)と共に、岡山市内を走る路面電車を和歌山県の観光案内所(わかやま応援館)にするという世界初の試みを行っている。和歌山県知事から館長を任命いただき、流行りのO2Oマーケティングの手法を試験的に取り入れ、微々たるものだが和歌山県への誘客効果も現れてきた。本来の業務とは別の自己研鑽として、文化・観光振興の一線で活動するなかで、人脈も広がり、様々な地域が抱える課題の本質に迫れるようになってきた。
これらの活動は、NTT西日本のワークライフバランス(仕事と生活の調和)を重視する企業文化・風土に支えられている。所定の業務時間内に効率よく業務を遂行することを促し、帰宅後の時間を自己研鑽などに充てることで、働きながらでも仕事以外の責任や要望を果たせる環境を与えてくれている。
現在は和歌山支店に勤務。最近は業務の1つとして、地元企業や自治体と共同で、通信を使った新たなビジネスやサービスを興そうという協業(アライアンス)推進を担当している。地元企業の事業拡大や自治体が抱える地域の課題解決など、地域密着型のプロジェクトを行うなかで、自己研鑽として続けてきたこれらの活動経験が大いに活かされている。地域を鳥の目で見て虫の目で深堀するという学生時代の精神をそのままに、机上論ではなく実際に地域の中へ飛び込み協働の輪を広げていく、そして、誰にも負けない知識や人とのつながりを大切に、それらをアイデアに変え、過疎対策、防犯・防災、観光振興をテーマに核要員として取り組んでいる。
この春からは、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所の竹中プロジェクトメンバーとして、これまでのボランティア活動をさらに学術的視点で考察していく。NTT西日本社員として、かつ、文化・観光振興の分野に長けたグローバルな視点を持つ研究者として、あらゆる地域の課題解決に取り組むハイフニストを目指したい。グローバルスタンダードとなるような通信サービスを生み出し、人と人、人と情報がさらに繋がりあえる次代を創っていきたい。
西日本電信電話株式会社(いきいき共生運動)
http://www.ntt-west.co.jp/csr/2012/valuable/employee/symbiosis.html
公益社団法人和歌山県観光連盟 わかやま応援館