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2007.03.28

新しいプロセッサの上でものを作る

SFCスピリッツ

新しいプロセッサの上でものを作る

安田絹子さん
株式会社フィックスターズ
1996年環境情報学部卒業
1998年政策・メディア研究科修士課程修了、2001年政策・メディア研究科後期博士課程修了

コンピュータの中枢にあたる部分を、プロセッサと呼ぶ。私はいま、"Cell"という、新しくてちょっと変わったプロセッサの上でプログラムを書きながら、この曲者をどう扱えばいいのか日々考えている。

SFCに入ったばかりの頃の私は、コンピュータもプロセッサという言葉もろくに知らなかった。しかし、そのころのSFCには、なにか不思議な魔法がかかっていたように思う。そこでは、当時最先端のUNIX端末がずらりと並び、まだその名を知られていないインターネットが床を這い、やがて産声をあげる Webの熱い予感が漂っていた。

その不思議な興奮の中で私はUNIXとネットワークに出会い、人生の何かが大きく狂って、コンピュータをいじりながらなぜか博士課程にまで進んでしまった。その後、時は流れ、ITバブルは弾け、プログラムを書く仕事はIT土方と呼ばれるようになり、科学としてのコンピュータはどこが残るのか、という話も聞くようになった。しかし、私は不思議な興奮を感じたまま今もコンピュータの前にいる。

私はいまはフィックスターズという会社でCellプロセッサと格闘する毎日を送っている。Cellはゲーム機のPLAYSTATION 3にも搭載されているプロセッサだが、かなり「面白い」あるいは「変な」プロセッサで、手を焼くことこの上ない反面で妙に興味を惹かれる。フィックスターズには、2005年にSFC出身の後輩に「何か面白いことをしよう」と誘われて入った。その「面白いこと」が何かは当時わかっていなかったし、今も多分わかっていない。でも私たちはCellに惹かれてCellをいじり、なぜかムキになったようにCellの情報発信に燃えた。そうしているうちにまた新しい、しかも優秀な人たちが少しずつ集まってきて、みんな面白いことをしようと思っている。

私はもうしばらくコンピュータの前で何かをしようとするだろう。その下の個々の技術が何かは本当は大きな問題ではない。新しい技術がまとう不思議な興奮と、何かを作り出す喜びは、たぶんSFCで学んだ。大学時代に学び損ねたことは山のようにある。それでも、当時の空気が自分の中に残っていることは確かなようだ。

→株式会社フィックスターズ
→フィックスターズで公開しているCell情報提供サイト

(掲載日:2007/03/28)