SFCスピリッツ
Lawyer, Lawyer!!
法科大学院学位授与式にて、
平良木登規男委員長と石井恵介さん
2002年総合政策学部卒業
2006年法務研究科(法科大学院)専門職学位課程修了
平成18年9月21日、第1回新司法試験結果発表の時を、私は歓喜の瞬間として迎えることができた。試験に向けて何度も繰り返し覚えた条文・判例等が次々と頭を過ぎったが、それらの幹となって私を合格まで導いてくれたのはSFC時代に培った法的思考能力であると思う。
SFC時代、私は『憲法を通じて米国を知ること』を研究テーマとする阿川尚之研究会に所属していた。毎回学生による判例の発表が行われ、ソクラテスメソッド*の下、聴き手はいつでも質問を投げかけてよいことになっている。発表者は教授・学生の容赦ない質問にたじろぎながらも、何が争点(Issue)となっているのかを見出し、それを論理的に解決していく。この『法』を枠組みとした問題発見解決能力がいわゆる法的思考能力と呼ばれるものであり、2年間研究会に所属することにより私の同能力は相当鍛えられたように思う。
私は高校3年間を米国で過ごしたのだが、大学で学ぶうちに「もっと米国について知りたい」と思うようになり、1年間の塾内派遣交換留学生として米国ワシントン大学へ赴いた。現地で履修したどの科目でも様々なバックグラウンドを持つ学生による熱い議論が行われたが、そこには必ず論理という共通ルールが存在した。
帰国後、法曹として日米間をつなぎたいという思いから司法試験の勉強を開始し、卒業後1年半の浪人生活を経て、慶應義塾大学法科大学院に授業料免除の奨学生として入学することができた。同大学院のカリキュラムは非常に充実しており、2年間で法的思考能力を更に鍛えるのは勿論のこと、学術的知識のみならず最先端の法実務を学ぶことができた。そして迎えた新司法試験。「慶應の奨学生は受かって当然」という雰囲気の中、前例のない見知らぬ第1回試験に臨むプレッシャーは大変なものであったが、多くの支えのお蔭で、無事合格を勝ち取ることができた。
今後は論理と語学を兼ね備えたプロフェッショナルとして、日米間取引の円滑化ひいては未だに様々な分野において存在する両国間の障壁を乗り越える架け橋となれるよう尽力したいと思っている。
*ソクラテスメソッド・・・アメリカのロースクールでよく用いられる、講義ではなく、教員と学生との対話を通して進められる授業形式
(掲載日:2006/10/25)