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2007.10.24

ポスト・グラフィティの文化的態度

SFCスピリッツ

ポスト・グラフィティの文化的態度

大山エンリコイサムさん大山エンリコイサムさん
アーティスト、東京藝術大学大学院 美術研究科修士1年
2007年環境情報学部卒業

文化という概念は、今日どの様な意味を持ちうるだろうか。一般的には、特定の社会集団の生活に根ざした習俗・習慣や、それに基づく様々な創作物などの総体が文化だと考えられている。ところが現代では、グローバリゼーションにより地理的な隔たりが一つの社会を一つの文化形態に留めておくことはない・・・と言うといかにもそれ以前は諸々の文化形態は独立した非連続体であったかのようだが、実ははるか昔から文化は宗教的・政治的・経済的な要因によって多様に伝達・運搬され混ざり合ってきた。従って、文化の混合化が進んだのが現代なのではなく、文化とはそもそもハイブリッドなものであること、そして文化には極めて強度な政治性が潜んでいることが発見されたのが、現代であると言える。さて、この様に考えてくると、文化という概念の持つ意味の自明性もだんだんと揺らいでこないだろうか。文化とは何か。そこにはもちろん、たった一つの正しい回答は存在しない。

僕は、グラフィティという社会現象に早い段階から興味を持ってきた。それは極めて現代的な性格を帯びた一つの文化形態である。“大文字”の文化が最早存在しない今日、複数の事例に適応可能な文化分析の便利な雛形によってではなく、個々の事例に即してその都度練り直される手法をもってグラフィティを分析すること。そして、単に外的に分析するのではなく、その分析を契機にグラフィティの内側に入り込み、内側から能産的に創り変えていくこと。これは僕がポスト・グラフィティと呼んでいる試みであり、僕の想定する今日的な文化的“態度”の一つである。現在、東京芸術大学の大学院に籍を置きながら、ポスト・グラフィティ論に基づきアーティストとして活動しているが、この様な独特の実践の開始時点において、僕がSFCという文化-環境に包まれていたことは偶然ではないだろう。

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(掲載日:2007/10/24)