SFCスピリッツ
ヒューマン・ヒューマン・インタラクション
市川文子さん
ノキア・ジャパン株式会社 デザイン部
シニアデザイナー、ユーザ・エクスペリエンス
1997年総合政策学部、1999年政策・メディア研究科修士課程
ノキアという会社をご存知でしょうか。GSMや3Gと呼ばれる第二・第三世代の携帯電話を開発するフィンランドの会社で、現在130カ国以上で端末を発売しています。SFC在学当時、偶然にもノキアのインターンシップに参加する機会に恵まれ、それをきっかけにフィンランドの首都ヘルシンキで5年、さらに中国北京で3年勤務してきました。日本には昨年より帰国し、現在は都内のオフィスでデザイン部門に勤めています。
デザインというと商品の姿かたちをデザインするインダストリアル・デザインを連想される方が多いかと思いますが、私の専門は一般的にコンセプト・デザインとよばれるものに当たります。大抵のプロジェクトはまずユーザを観察・リサーチするところから始まり、その中で得られた情報を頼りに次世代の端末をイメージしていくというのが主なプロセスになっています。数年前までは市場の拡大に伴い中国に関するものが多かったのですが、最近ではアフリカやインドなどの固定電話の回線が一般的でない地域で携帯電話が急速に普及していることもあり、それに伴って担当する地域も移動・拡大してきています。つい先月もそうした新しいユーザの動向を理解しようと、チームメンバー数人とともにガーナでフィールドワークを終えたばかりです。
こうして書いていくとそんな遠く離れた所まで行って何をわざわざ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私個人は仕事を通じて異文化に触れる機会を得て楽しんできた社会人生活というのが実感です。SFCでは学部・大学院共に安村通晃先生の研究室にお世話になり、ヒューマン・コンピューター・インタラクションと呼ばれる分野を研究していたのですが、やってきたのは単純にヒューマン・ヒューマン・インタラクションだったのではないかという気さえしています。フィンランドでは4人の子持ちながらフルタイムで働くお母さんを見、中国では小さい子供を田舎に預けて離れて働く同僚を持ちました。ガーナではイスラム教徒のおじいさんに「私がもう少し若ければ君を第4夫人に」とあまり嬉しくないお言葉も頂きました。世の中にはいろんな人生があるのだなということを心に留めつつ、公私共に前進できれば、と考える毎日です。
(掲載日:2007/12/26)