SFCスピリッツ
地域に根付いて仕事を創る 〜「水うちわ」から地域再生へ〜
水野馨生里さん
フリーライター/NPO契約職員
2005年総合政策学部卒業
私は現在、出身地である岐阜市を拠点に活動をしている。卒業後は東京のPR会社で大企業の広報に携わり、そのダイナミックな事業展開に醍醐味を覚えたが、その仕事を「自分がやる意味」というものを見出せなかった。
私は大学4年から岐阜の伝統工芸品「水うちわ」の復活プロジェクトに携わっていた。水うちわとは、美濃和紙と竹でつくられ、うちわの先端を水にさっと浸して仰ぐことができ、面に張られている和紙が水のように透明なうちわだ。しかし、社会環境の様々な変容の中、15年ほど生産が途絶えていた。
それを知った私は、百年以上商いを続ける岐阜唯一のうちわ専業職人と復活プロジェクトを2004年春より仲間と立ち上げ、遠隔地から参加をした。
東京で水うちわPRイベントの開催や、ニュースリリース配信などを行う中、水うちわに関する出版の話をいただいた。2005年夏のことである。
こうして、執筆をはじめたのだが、書き進めるにつれて地元へ戻ることを現実的に考えるようになった。水うちわの、そして地域の抱える問題をその場で見て受け止め考えたい。
2006年4月、岐阜の地元企業へUターン就職。2007年5月末に出版が叶い、6月末には出版を契機にライターとして独立をした。
水うちわを本当の意味で復活させるには、地域にかつてはあった社会環境を取り戻すこと。こうした中、地域で活動する人々と出会いを繰り返してきた。川の環境のため、里山再生のため、林業後継者育成のため、まちづくりのため・・・様々なアクターが地域再生のために動いている。
こうした人々と有機的につながり、地域のビジョンを共有、ともに動いていくことがこれからの課題だ。
地球温暖化をはじめとするグローバルな環境問題、地域コミュニティの崩壊、地方財政の破綻、エネルギー・食料自給率の低下・・・様々な問題が目の前に降り注がれるが、地域から一つの解決策を見出したい。
『水うちわをめぐる旅〜長良川でつながる地域デザイン〜』出版社ウェブサイト
(掲載日:2007/09/05)