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2007.11.14

中国という軸と環境という枠

SFCスピリッツ

中国という軸と環境という枠

黄土高原
黄土高原
松永光平さん
立命館大学文学部地理学教室実習助手
2001年環境情報学部卒業

充実した語学・コンピュータ教育に惹かれ、途上国の環境問題に関心があったことから環境情報学部に入学。隣国である中国の環境問題の解決に貢献できる人材を目指して、田島英一先生・梶秀樹先生・福井弘道先生の研究会にお世話になりました。そこではたくさんの仲間と共に、中国語による文献読解と論文執筆の基礎・統計学の応用・リモートセンシングやGISの技術等を学びました。これらは現在にいたるまで研究活動の支柱となっています。

北京オリンピックに象徴される「発展する中国」の裏には、人々の過酷な生活があります。私が研究の対象としている黄土高原は、黄砂が年々降り積もるだけでなく、現在はいたるところ谷に刻まれ水・土・緑のすべてが欠けています。住民は、貧困と環境破壊の悪循環から逃れるため、農耕・牧畜の停止や移住を余儀なくされています(画像)。他方で、歴史学や地質学分野の研究者により、ここが数千年前は緑に覆われていたかもしれないということがわかってきました。私は、自然環境変化と人間活動の盛衰とのかかわりという地理学的視点から、黄土高原が谷に刻まれ、水と土とを失い不毛の大地へと変わっていく過程を明らかにしようとしています。これまでに、黄砂が降り積もりはじめる前の地形が、その後の谷のできやすさに影響を与えていることを明らかにしました。

勉強や研究と並んでSFC以来のこだわりがNGO活動。中国がご専門の小島朋之先生に啓発され、日中学生会議で中国人学生と日中両国間の懸案事項について議論したのはいい思い出です。現在は、緑の地球ネットワークというNGOにかかわりながら、中国黄土高原を中心に世界各地の砂漠化を防ぐ道を模索しています。

基礎をつくる学部時代に、幅広く学び、考え、体験する機会を与えてくれたSFCに改めて感謝する今日このごろです。

日中学生会議
http://jcsc.jp/
認定特定非営利活動法人緑の地球ネットワーク
http://homepage3.nifty.com/gentree/

(掲載日:2007/11/14)