SFCスピリッツ
「わからないこと」を仕事にする。
坂倉杏介さん
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 専任講師
2003年政策・メディア研究科修士課程
「わからないこと」は、二つに分けられると思います。「わからないから、どうでもよい」ことと、「わからないから、放っておけない」こと。前者が、とりあえずググってみればなんとなく安心できるのに対して、後者は、それだけでは納得いかない。他人事の問題と、自分事の問題の違い、かもしれません。
SFCで環境デザインを学んでいた私にとって、「場」という問題は人ごとではありませんでした。なぜ、ある「場」では人々は寛容で創造的な関係をつくれるのに、別の「場」ではそうならないのか? 結局、自ら地域に飛び込み「場」をつくってみなければわからないと開き直り、「下町の空き店舗を改装して、学生何人かで住み込む」という、生活ともアートとも研究とも判然としないプロジェクトをやっていました。
その後、この問題はずっと自分のテーマになり続け、現在はデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構という研究所で「芸術の共同制作の場」を研究しています。
また、具体的に「場」をつくる試みも続けていて、三田キャンパス近くの一軒家を改装し、教員、学生、商店街の方々と一緒に地域のコモンハウスとして運営する「三田の家」や、艀(はしけ)という鉄の箱のような形をした船を、水上のラウンジ空間に改装するプロジェクトなどを実践しています。
SFCを出て5年。SFCで見つけた「わからないこと」が昴じて、自分にしかできないことが次第に形を現して来たように感じています。考えてみれば、「わからないから、放っておけない」テーマは、人よりも深く、時間をかけて考えられるフィールドなのかもしれません。SFCは「人任せにできない問題」を見つけるのに、絶好のキャンパスだったと、いま改めて実感しています。
坂倉杏介ウェブサイト
http://kyosuke.inter-c.org/
BOAT PEOPLE Association
http://www.boatpeopleassociation.org/
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構
http://www.dmc.keio.ac.jp/
(掲載日:2008/04/16)