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Magazine
2008.08.27

好奇心が持続的な都市をつくる Durch Neugierde die nachhaltige Stadt schaffen?

野上陽子さん野上陽子さん

株式会社日本設計 都市計画群
2003年総合政策学部卒業


“Machts gut (元気でね)! ”今年のお正月、7年越しのドイツの友人が私と家族を訪ねてくれました。「きっと陽子の住むまちに行くから!」という約束を本当に果たしてくれたことを、とても嬉しく思いました。

都市環境を紡ぐ

(株)日本設計では都市計画コンサルタントとして、主に東京都心で大規模な都市開発業務を担当しています。長期的な都市構想を描きつつ、関連する法制度を活用して空間計画を提案し、クライアント・行政・地元の方々など様々な立場の意見を調整しています。学生時代からのテーマ「環境都市の実現」に向けて、高層ビルのCO2排出量を削減する建築・設備計画や、オープンスペース・街路・屋上の緑化を提案しています。今年設立された「環境創造マネージメントセンター」では、企業や自治体が抱える環境経営上の課題を分析し、建設・不動産の視点からその組織の価値を向上する道すじを考え、費用対効果の高い計画に取り組んでいます。

SFC=好奇心(ヨーロッパ×まちづくり)

「ヨーロッパで都市について学びたい」。高校生だった私の憧れでした。SFCは懐が深くて、「やってみたい気持ち」を応援し、助けてくれる方々に恵まれました。

石川幹子先生の研究会では、「水と緑」をキーワードにまちの成立ちや資源を分析し、将来像を提案する過程を学びました。卒業論文では地元を対象に、「八景式風景鑑賞方法を現代のまちづくりに活かす方法」を探りました。ドイツ語研究室の方々には、SFCで始めたドイツ語を活かして、専門を深める機会をいただきました。

学部の交換留学ではイギリスでランドスケープデザインを学び、大学院では修士論文の研究で渡独しました。「都市縮退で発生した空地を緑地に転換する制度」をテーマに、旧東ドイツ地域の都市で行政にヒアリング調査を行いました。多様な文化をもち緑溢れる欧州のまちがどのように形成されたのか、現地の友人たちの生活者としての声を聞きながら、日本と比較して知見を深めることができました。

さがし続ける

実務では、秀逸な提案であっても、様々な思惑や既成事実が絡み合って実現に至らないことも多くあります。数々の難題に気持ちが沈むことも。でも、好奇心をもって忍耐強く探し続けていれば、同じように「やってみたい気持ち」を持ち、共に行動できる人たちにも巡り会えると感じます。

都市は未来につながる出会いの場。建設・不動産などのものづくりの分野が担う役割は大きいと感じます。まず長期ビジョンを持って、現在のストックを活用し、その都市らしい営みを継承する。次に、建物や街路の持続性のあるデザイン、自然エネルギーの面的活用等でビジョンを実現することが、各企業の経営発展を支え、まちの価値を高めると実証する。そして、一つの施設内だけではなく、街区や地域、さらには業界の枠を越えて、ダイナミックな環境行動を広げていければと思います。同じ気持ちを持った多様な分野の方々と、行動を共にしていきたいです。

株式会社日本設計
http://www.nihonsekkei.co.jp

→環境創造マネージメントセンターCEDeMa(セデマ)

 

(掲載日:2008/08/27)