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2013.08.27

バイオからものづくりの形を考える

廣江綾香さん
東京工業大学 特任助教
2008年 環境情報学部卒業、2010年 政策・メディア研究科修士課程修了

「微生物によるものづくり」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。私は現在、東京工業大学で微生物がつくるプラスチック材料、いわゆるバイオプラスチックの研究をしています。実はこの「微生物によるものづくり」は日本が世界に先駆けて発展させてきた分野であり、食品・医薬品・化成品・化粧品・エネルギー分野など幅広く利用されているものづくりの形の一つです。例えば、日本人の食生活に欠かせない味噌・醤油・納豆に始まり、お酒やサプリメント、点滴に含まれるアミノ酸、抗がん剤や洗濯洗剤中の酵素、お化粧品の有効成分コエンザイムQ10、バイオエタノール等、私たちの身の回りにあるこれらの製品や成分は微生物の体内で作り出されているものです。私が所属する研究グループは、その中で、微生物がつくりだすバイオプラスチックに焦点をあて、性能や生産性を高めるための基礎研究を進めています。

そもそも、私がこういった「微生物によるものづくり」に興味をもったのは、SFC時代に冨田研(先端生命科学研究会)に入った事がきっかけでした。当時の私には、目に見えない微生物を使って物を作るという概念は存在しておらず、まったく新しい世界に足を踏み入れたような、はたまた魔法にかかったような感覚に捉われたのを覚えています。また、微生物を使ったものづくりの多くが、従来法と比べ環境にやさしいプロセスとして期待されている事を知りました。私たちの生活がどんどんと快適になっていく一方で、犠牲になっている生態系や環境問題に疑問を抱いていた私は、直感的に自分がやりたいのはこれだと思いました。

私がこれからやっていきたい事は、SFC在学時から変わらず、いかにものづくりという経済活動を自然環境を損なわない形あるいは持続可能な形で実現していくか、その答えを追及していく事です。そのための解決策の一つを提案するために「微生物によるものづくり」を考えています。

さて、研究というフィールドには、長い時間をかけてこつこつ進める作業が多く存在しています。辛抱強いとも思えない私が研究の分野で人並みに過ごしてこられたのは、直感でこれだと思った、その感覚を味わえるものに出会ったからだと思います。直感に響く事を探して掘り下げる、ぜひこの事を大学時代に味わってほしいと思っています。SFCは、学生にそのための機会を多く用意してくれている場所だと思います。

20130826_hiroe 右下が筆者、現東工大研究室のメンバーと


(掲載日:2013/08/27)