谷中 修吾さん
復興支援プロジェクト「道のカフェ」プロデューサー
2001年総合政策学部卒業、2003年政策・メディア研究科修士課程修了
◆カフェづくりを通じた地域コミュニティ再生
東日本大震災後の初夏、スターバックス、キヤノン、松下政経塾の協力を得て、復興支援プロジェクト「道のカフェ」を立ち上げました。被災地にオープンスペースのカフェ空間を創出することで、地域コミュニティの再生を支援する取組です。この1年は陸前高田と気仙沼にご縁があり、仮設住宅の自治会長さんなど地域リーダーの方々と連携を図りながら、地域のみなさんと一緒にコミュニティカフェづくりを推進してきました。
「ここに来るとみんなとお話できて楽しい」「一緒にカフェをつくれるのがうれしい」「近所の人に声かけするきっかけになるのがいい」…。地域のみなさんからの声を聞いていると、被災地におけるコミュニティ再生という観点では、ささやかながらお力添えができていることを嬉しく思っています。一方、依然として働き口が無いことへの強い懸念が広がっており、経済的な問題に直面している現状を肌で感じています。
◆問題を解決するプロジェクトデザイン
被災地の現場の声に耳を傾けながら、私たち「道のカフェ」もプロジェクトのアップグレードを重ねてきました。カフェから見える被災地の姿を写真で伝える“フォトアルバム企画”もその一つ。スターバックスさんの店舗にアルバムを設置して、文字通り、東北と全国をカフェでつなぐ試行を始めています。また、少しでも地域経済の再生に貢献できればと、カフェという空間を地域ビジネスのファンづくりの場に拡張すべく検討中です。
このように地域の現場最前線で活動していると、変わりゆく現地のニーズに応えるために“プロジェクトをデザインする力”が強く求められることを実感します。逆に、プロジェクトを設計・運営するスキルがあれば、被災地をはじめとする地域の現場で貢献し得る余地は極めて大きいことも事実です。私が「道のカフェ」で発動する職能もまさにプロジェクトデザインで、SFCの問題解決プロフェッショナリズムに深く通ずるものがあります。
◆社会を変えるモメンタムの創出
そのSFCに私が出会ったのは15年前の1997年。幼少の頃に着想した都市づくり・国づくりを目指してAO入試で入学し、ビジョンの実現に必要と考えた問題解決の専門性を修得するキャリアを歩んできました。外資・戦略コンサルティングファームから独立した2010年には、ソーシャルプロジェクトの創出にフォーカスしたプロフェッショナルファームを立ち上げ、地域の課題を解決するプロジェクトの設計・運営に従事しています。
今もなお自分の中で確かに息づく、福澤諭吉の実学精神を継承したSFCの問題解決スピリッツ。SFC時代に経験した全てのモメンタムは今の自分の一部を形成し、地域における問題解決という形で具現化されています。今後も日本そして世界で様々な社会問題が表面化していく中、SFC卒業生が貢献し得る領域は益々広がっています。問題解決スピリッツをもつSFC同志とともに、社会を変えるモメンタムの創出に立ち会えることを心待ちにしています。
「道のカフェ」プロジェクトチーム |
仮設住宅敷地内に作ったカフェ空間 |
谷中修吾(やなか・しゅうご) http://www.19780127.com
静岡県出身。SFC卒業後、スタンフォード大学NGOを経て、財団法人松下政経塾卒塾。NPOにて経済産業省キャリア教育プロジェクトのモデル事業化を実現した後、外資・戦略コンサルティングファーム Booz Allen Hamilton を経て、ソーシャルプロジェクトの創出にフォーカスしたプロフェッショナルファーム Velvet & Company を設立。CEO/プロデューサーとして、都市・農村を舞台に地域の課題を解決するソーシャルプロジェクトの設計・運営に従事。
復興支援プロジェクト「道のカフェ」 http://www.michinocafe.com
Velvet & Company http://www.velvet.jpn.com
(掲載日:2012/05/24)