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2004.09.24

心を引き締めて、新学期を迎えよう|小島朋之(総合政策学部長)

8月17日から19日まで、2泊3日で北京に出張した。出張目的は2つで、1つが外務省による「日中知的交流事業:中国の全面的小康社会に向けたガバナンス研究」、いま1つがSFCの「政策COE:日本・アジアにおける総合政策学先導拠点形成」で進めている「日中環境政策協調研究」の中国側との打ち合わせである。

家族を連れて北京に1年2ヶ月滞在したのが20年前で、そのときは外務省在外専門調査員として日本大使館に勤務した。改革・開放がやっと都市でもはじまったばかりで、中国語で書かれた私の名刺の肩書きは「政治専員」であり、赴任直後は日本の特務と誤解されがちで、警戒されてばかりであった。街もいまほど華やかでなく、幅100メートルもある幹線道路の長安街を自動車で夜に走ると、漆黒の暗闇で少ない対向車がしかも無灯火で向かってきたのである。

いまは町中に自動車が溢れて、夜の街もライトアップされ、東京と遜色のないほどといえばいい過ぎであるが、様変わりである。中国側の研究者や政府関係者との交流もかなり自由になり、今回も旧友の中国共産党中央文献研究室の副主任と食事をともにして、鄧小平生誕百周年や最近の中国政局についてかなり突っ込んだ話をした。

今回の出張では、日中環境政策協調の研究に関連して、清華大学の環境科学及工程学部の学部長と研究協力について協議した。この学部はCO2(二酸化炭素)の取引スキームの一つであるCDM(クリーンデベロップメント・メカニズム)について、中国最大の研究拠点である。すでにイタリアのODAを利用して、CDM研究センターのための高層ビルを建設中である。

同学部との連絡を引き受けてくれたのが、私の教え子の中国人留学生であった。彼女はSFCの環境情報学部を卒業し、政策・メディア研究科修士課程を修了し、名古屋大学で博士号を取得し、いまは清華大学の同学部の副教授である。自分の教え子が中国に戻って、中国の環境研究に貢献している姿をみることができるとは、長年にわたって中国研究に取組んできた私にとって感慨深いものがあった。

清華大学を訪問した8月18日は、同大学の入学式であった。彼女によれば、新入生の父兄が全国各地から入学式には多数参列し、彼女が担当する学生たちの父兄は息子、娘を「よろしく」と挨拶にやってくるとのことである。日本の入学式風景とほとんど変わらない。しかし、ここは中国。授業は9月1日に始まるが、入学式の2日後には10日間の軍事訓練が予定されていたのである。

SFCも9月22日に秋学期の入学式が挙行された。軍事訓練はないが、心を引き締めて、新たな学期に新たな気持ちで新たな問題の発見と解決に取組もう!

(掲載日:2004/09/24)

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