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2006.09.08

若手研究者|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

8月下旬に、久しぶりに第2のふる里であるPittsburghを訪問した。今回は、Pitts大で行われたSFC出身O君の博士論文の審査会に審査員として出席するためと、CMUにいるFarber先生や金出先生と打ち合わせをするための旅であった。非常に短い滞在であったが、長く住んでいた街なので、レンタカーを借りてOaklandに向かう道も迷うことなく、スムーズにホテルに到着した。翌日、Pitts大のDept. of Computer Scienceが新しいビルに移っていたのと、CMUでは、Intel研究所のビルが完成していただけでなく、Gatesビルディングの建設が始まっていたのには、びっくりした。相変わらず、キャンパスが進化し続けている。

CMUのブックストアに立ち寄り、例によって、CS関連でどんな教科書が使われているかを見ていた際に、Jennifer Washburn氏の "University, Inc.:The Corporate Corruption of American Higher Education" とChris Anderson氏の "The Long Tail: Why the Future of Business Is Selling Less of More" の本を見つけた。University Inc.は、大学関係者は、一読する価値がある。Long Tailは、梅田望夫さんの "ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる" の後、読むといいと思う。

さて、お題の「若者」であるが、「若手研究者」という視点で見てみよう。我々のように研究教育の現場で働いている者の特権は、若者と自由に議論できる場がたくさんあることだ。日々いろいろな発見がある。良い悪いは別にして、いくつかの事例(症例?)をあげてみよう。

1)情報鮮度過敏症

新しい成果成果とプッシュされている訳ではないと思っているが研究の現場で驚くことの1つに、「何々の論文は、199X年のものなので古いので読みませんでした」と言われる時が稀にある。2005年の論文も、この人の価値観からするとすでに古いのかもしれない。でもいい研究成果は、普遍的な価値をもっている。

2)ネット依存症

最近では、メッセ依存症あるいはSNS依存症という人たちかもしれない。その昔、情報処理の授業中にメールを打っていたり、Webを見ていた人がいたが、近頃は、Mixiである。人は、ひとりでは生きていけないことは事実である。しかし、絶え間なくつながっていないと不安であるという感覚には、やや危険なものを感じてしまうのは、私だけだろうか?

3)精神的虚弱体質

これは、ある企業のソフトウェアに関する研究所の所長と話していた際にも盛り上がった話題であるが、若い人たちの中で、打たれ弱い人が増えているのではないかという指摘である。仕事上のトラブルやプライベートなことでのトラブルに巻き込まれたりすると、折れそうになってしまう人がいるというのである。実際、折れてしまった人も職場では出ており、本当にもったいないとのことである。精神的虚弱体質を改善するのは、大学レベルではもう遅いのではないかと思ってしまう。

一方で, SFCにいると若い研究者たちの"感性"は、実に豊かだと感じるし、研究に対してもエネルギッシュである。このエネルギーと自由なキャンパスカルチャと快適な環境があるかぎり、SFCキャンパスは進化し続けられるのではないかと思っている。楽観的すぎるだろうか?

(掲載日:2006/09/08)

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