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2006.09.21

経済の構造改革を通じた知の構造改革|小島朋之(総合政策学部長)

総務相の竹中平蔵先生が、自民党総裁の任期満了にともなう小泉総理の退陣に合わせて、参議院議員を辞職することになった。72万の得票で自民党の比例代表としてトップ当選しながら、6年の任期途中で辞職することについては厳しい批判もでている。任期半ばの議員辞職は国民の負託を裏切る行為であり、誠実な対応と説明の責任はあるだろう。

しかし、「小泉内閣の終焉をもって、政治の世界での役割は終わった」という発言はそれなりに納得できる。竹中大臣は小泉内閣発足以来、5年にわたって小泉構造改革の政策実践の中心的役割を果たしてきた。総合政策学部に在籍中から、日本にも公共政策の研究と実践の間を行き来できるポリシー・ウォッチャーが必要であると常々語ってこられ、自らそれを体現したのである。 

総合政策学は政策課題の発見からその重要性の確認、政策選択肢の作成とその執行、そして執行結果の評価という政策サイクルの繰り返しの中から知の再編をめざす「実践知」の集積である。総合政策学は日本ではSFCで初めて提唱され、従来型の学問研究の構造改革を迫る試みであった。こうした知の構造改革を、竹中先生は日本経済の構造改革の実践を通じて取り組まれたのである。

間違いなく、こうした政策の研究と実践の往還は、政策の目標、内容やスタイルなどについては異論があるとしても、総合政策学を志す者にとって一つの理想型である。竹中先生には5年間の政策実践に悔いはないはずであり、5年間の実践を総括したうえで、ポリシー・ウォッチャーとして研究と実践の往還を今後も繰り返すはずだ。それゆえに、「民間人、経済の専門家として貢献できることは何でもするつもり」と述べられるのであろう。5年間の実践、お疲れ様でした。竹中先生は、いまでも総合政策学部の客員教授である。

(掲載日:2006/09/21)

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