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2006.11.09

ホテル・ルワンダ|佐藤蓉子(看護医療学部長)

映画は好きだが、映画館にまで行って見ることはあまりない。大画面でその世界に浸る楽しみはテレビとは比較にならないものだが、それだけに内容によってはかなりしんどいことにもなる。「ホテル・ルワンダ」は、そのような映画である。思わず目を背けたくなるような場面もあり、見終わった後もしばらくは身体のこわばりが解けないような状態になった。それでも、見ておくべき映画だと思う。 

ホテル・ルワンダ公式サイトでは以下のような説明がされている。1994年、アフリカのルワンダで長年続いていた民族間の諍いが大虐殺に発展し、100日で100万もの罪なき人々が惨殺された。アメリカ、ヨーロッパ、そして国連までもが「第三世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、ひとりの男性の良心と勇気が、殺されゆく運命にあった1200人の命を救う。

この映画のキャッチフレーズである、「愛する家族を守りたい。」ただひとつの強い思いが、1200人の命を救った。――にあるように、家族を愛するひとりの夫であり父親であるホテルマンが自分の家族を守るために奮闘する過程で、虐殺者たちから逃れて最後の救いの場を求めて集まってきた1200人もの人々をホテルにかくまい、彼らの命を救った実話をもとにしたものである。

私たちは「夜と霧」の世界や旧満州での日本軍の行為について聞いている。それでもそれらは、私が関与できない時代のお話だからと言い訳しようと思えばできるのに引き換え、ルワンダのことは私と同時代の話である。1994年なんて最近のことである。迫ってくる危険のなかで主人公が、虐殺者たちから人々を守る最後の手段として、国際社会の関心を惹きつけて国連軍の援助を得ようと必死になっている場面を見ているのはつらかった。

自分がこの平和な時代の日本に生活しているということは偶然に過ぎない。ひょっとしたら私が、あそこにいる一人になっていたかもしれない。あるいは、虐殺する側に立っていたかもしれない。さまざまな状況の中で、どちらの立場を取るのかが常に問われているのだろう。

「ホテル・ルワンダ」はそのようなことを考えさせる映画である。このような映画をじっくり鑑賞しよう。物思う秋である。

(掲載日:2006/11/09)

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