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2007.08.17

わが家の党議拘束|冨田勝(環境情報学部長)

“ちょいむなしい 夫婦で別の票を入れ”

夫婦で投票所に行っても、与党と野党に一票ずつ入れると、それぞれ相殺してしまって影響力を行使できずなんだか空しい。そこで私たちは結婚した時から、必ず同一候補に二票入れることにしてきた。二人の子供が成人してからもこの慣習は続いており、わが家の親子四人は必ず同一候補に四票入れることにしている。

なので選挙が近づくと、家族団らんの話題が政策論議になるのである。子供達も最初は「まずお父さんとお母さんの意見を聞いてから考える」と静観しているがそのうち議論に参戦し、ときとして激しく紛糾する。レストランで食事をしながら議論すると、両どなりのお客さんが(聞き耳立てて)静かになるくらいだ。たしかに、食事をしながら「憲法改正」や「年金問題」のディベートしている家族もかなり珍しい。

ディベートの結果、四人が納得できる結論が出ると、みんな気持ちよく投票所に行き四票を投じる。しかし意見が分かれてどうしても結論が出ないとどうなるか。

わが家でキャスティングボートを握っているのは何を隠そう“お母さん”だ。意見が対立して政策論議が煮詰まってくると、徐々に「あの政党は全くセンスがない」とか「あの候補は気持ち悪いからイヤ」と“感性”に訴え始める。「え、そんなことないよ」と子供達がいくら言っても、「絶対にいや。あんな人に投票するぐらいなら死んだ方がましよ」と頑として動かなくなる。それを聞いてあとの三人は「うわー、キターー」と内心叫びながら、そこまで言うならいいよわかったよ、とお母さんの精神衛生が優先されるのである。

(掲載日:2007/08/17)

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