MENU
Magazine
2008.10.23

おかしら日記|金子郁容(政策・メディア研究科委員長)

みなさん、新蕎麦の季節が来ました!そこで、「グルメガイドその一」として、自宅近くの蕎麦屋ガイドをお送りします。(その二、その三があるかどうかは、このコラムの評判による。)

地元民の間で、最近、俄然蕎麦ブームになっている。歩いてゆける範囲にある六つの蕎麦屋は、いつ行ってもどこも満員。イタリアンからフレンチからアルバニアンから、あらゆる凝った店が軒を並べるこの地区で、かえってヘルシー指向がオシャレなのかもしれない。

ご近所に最近出現して大人気の百円ショップと有名なワイン店の間にある「SC」は、古典的メニューの家庭的雰囲気の店だ。馴染み客が多く、サンダルで行くのが正しい。巨人軍の原監督も、以前、普段着で来ていた。蕎麦屋の丼ものはたいてい美味しいが、ここの人気はジューシーな親子丼。いけ面シェフが迎えてくれる地下鉄駅そばの「HN」は、野菜てんぷらつきの二色蕎麦(プラス、特製サラダを別注文する)がお勧め。超有名店である「TY」は、一本一本がそばの香りを主張していて超おいしいが超お高い。しかし、ここの蕎麦がきは一度食べてみる価値がある(粗引きは醤油をつけずに岩塩とワサビで)。

最近、息子が戻って来て手伝うようになった「KY」は小さなご近所蕎麦屋の典型で応援したくなる。お昼時のコロッケ定食がよい。商店街にある「総本家SS」は,人種も職業もあらゆるお客が来る。何を注文しても間違いないが、粋な江戸情緒を味わう店だ。

最後に、フリのお客は店とは気づかないたたずまいの「隠れ家」的な「TM」は、テレビドラマから抜け出したような若い夫婦(のように見える)がかいがいしく切り盛りしている。たぶん、奥さんの趣味だろう、お皿や丼など陶器の入れ物が静かに自己主張している。客層がいい。週末のお昼どきは、小さな子ども連れの三世代家族が多い。80歳代のおばあちゃんのグループがビールなど飲みながら、焼きなすや大根おろしをたっぷり載せた出し巻きたまごなどをつついて談笑している。よい風情だ。蕎麦通は、はじめての店はもりで品定めとするが、ここは、まずはかけを試して欲しい。

(掲載日:2008/10/23)