執筆者・論考紹介
公共政策と変わる法制度

資源循環政策の現場から――国際資源循環の適正化をめざして

塚原 沙智子

塚原 沙智子

環境情報学部 准教授

何を論じたのか

人間活動による環境への負荷は、産業革命以来、拡大の一途をたどり、1970年代前半には地球のキャパシティを超えたとされます。人類の存続の基盤たる自然環境は日に日に損なわれ、温暖化や種の大量絶滅といった影響が顕在化し始めました。こうした中、地球の許容範囲の中で私たちの生き方をコントロールするための新しいシステムへの転換が急務となっています。しかし、現代の社会や経済のシステムを大きく変革していくのは容易ではありません。根本的な問題を捉えるための調査・分析とエビデンスに基づく適切な制度設計が必要です。

本稿は、多岐にわたる環境問題の中で資源循環政策に焦点を当てています。特に金属・プラスチック資源の国際資源循環に注目し、海外輸出に伴い環境問題が起きる背景を紐解きます。そして、資源循環の問題を、汚染を管理する視点と有用な資源を確保するという視点の両方から捉え、将来を見据えて戦略的に資源循環政策をデザインしていく必要性について論じています。

執筆者の研究紹介

「人間の視野」はどこにあるのか。1970年代に書かれた『成長の限界』という本の筆者は、圧倒的に多くの人の関心は家族や友人に対する短期的なことに限られ、ごく少数の人々だけが遠い未来に広がる全世界的な関心を持ちうる、と述べています。先進国に暮らす私たちは、地球レベルの環境問題に対する大きな責任と影響力を持っているにもかかわらず、その視野は依然として狭いままです。私はこのような状況に焦りを覚え、行政官として大きなスケールで制度や枠組を構築していくことを志しました。人々の理解を得て、世の中に受け入れられる政策を作るには、ステークホルダーの関係性を探り、問題が発生したり解決に至っていない原因を掘り下げて、もつれた紐を解くように丁寧に問題の根幹を探していく研究が必要となります。特に、資源循環の領域においては、物の動きは需要に大きく左右され、ステークホルダーも多岐にわたります。コントロールしづらい条件の中で、環境保護と資源確保を両立するにはどうしたらよいか、現場の目線から政策の役割を探っています。