執筆者・論考紹介
公共政策と変わる法制度

金融政策と中央銀行のコミュニケーション

白井 さゆり

白井 さゆり

総合政策学部 教授

何を論じたのか

中央銀行の重要な業務である金融政策運営は国民の生活に直結する消費者物価の安定を目指して実施している。財政政策では税制・歳出および政府債務などに関連する法案が国会・議会に提出され、選挙で選出された国会議員によって審議され法案の成立に至るプロセスを踏むのに対して、金融政策では少数の専門家や中央銀行職員などから構成される金融政策決定会合で決定している。このため金融政策の決定内容について国会や国民・市場参加者に対してより丁寧に説明する必要がある。しかも金融政策は銀行システムや金融市場を通じて間接的に企業・家計に影響を及ぼすため、税金や補助金支給などを含む財政政策と比べ分かりにくく、その分丁寧なコミュニケーションが必要になる。本章では、金融政策とコミュニケーションの関係に焦点を当て、対外的な情報発信について解説する。また、近年、主要国の中央銀行が用いている金融政策の将来の方針を示すフォワードガイダンスと呼ばれるコミュニケーションにもとづく金融緩和手段について、日本銀行や米国連邦準備制度理事会(FRB)の事例を考察する。

執筆者の研究紹介

専門は、金融政策、マクロ経済、国際金融、ESG投資・経営。最近では、主要国の金融政策と世界の気候政策・気候関連の金融規制および中央銀行の政策に焦点をあてた研究を実施している。最近の著作には、『SDGsファイナンス』(日経BPプレミアシリーズ、2022年9月出版)、『カーボンニュートラルをめぐる世界の潮流:政策、マネー、市民社会』(文真堂、2022年7月出版)。英語での著作は、『Global Climate Challenges and Finance: From Sustainable and Innovating Finance to Green Central Banking and Financial Regulation』(2023年6月出版予定、Asian Development Bank Institute)、『Growing Central Bank Challenges in the World and Japan: Low Inflation, Monetary Policy, and Digital Currency』(2020年6月出版、Asian Development Bank Institute)ほか多数。