執筆者・論考紹介
総合政策学の方法論的展開

『開かれたオーラルヒストリー』の実践と方法

清水 唯一朗

清水 唯一朗

総合政策学部 教授

何を論じたのか

総合政策学にとどまらず、社会科学の方法は、定性的、定量的、混合とさまざまに発達ししています。SFCのようにまだほとんど取り組まれていないテーマに飛び込んでいく学生が溢れるキャンパスでは、まず当事者の声を多面的に聴き、構造を理解することが、それぞれのプロジェクトや研究を学生の想像の世界ではなく、地に足の着いた創造へと進めるための入口となります。

プロジェクトを進めるなかで、多くの学生は相応の広がりと深さを持った「聴く」を進めるにはきちんと方法を学ぶ必要があることを実感します。本稿はこうしたニーズに応えるために進めてきたSFC「オーラルヒストリーワークショップ」の実践報告です。

そのため、本稿ではSFCにおける多様な分野での「聴く」の広がりを反映して、オーラルヒストリーにこだわらず、多様な「聴く」方法を対象としながら、そのプロセスを準備、実施、分析の三段階に分けて紹介しています。探求に挑む高校生やプロジェクトに取り組む大学生をはじめ、学び動き続ける変革者の方々に活用していただければ幸いです。

執筆者の研究紹介

日本政治のいまがどのように形作られてきたのかに興味を持ち、政治学と歴史学を架橋する日本政治外交史を専門分野として研究に取り組んできました。とくに政治家と官僚の関係(『政党と官僚の近代』『近代日本の官僚』など)、政治と国民の関係(『Who's Govern?』『Educacion Civica』など)に関心をもって進めています。

そのなかで政治家や官僚へのインタビュー手法として学んだオーラルヒストリーが、活発にマイプロジェクトを進めていくSFC生とマッチしました。自分自身のテーマでの聴き取りはもちろん、学生のプロジェクトや他分野の研究者とのコラボレーション(『東京の生活史』など)へと発展し、現在は方法論の研究も進めています(『オーラル・ヒストリーに何ができるか』など)。

もうひとつ、日本研究の国際化、海外の日本研究の交流も楽しんでいるパートです。自著の翻訳出版を進めるほか、コロナ以前からアメリカ、イタリア、韓国、台湾、ドイツ、トルコ、中国、ベルギーの日本研究者を受け入れ、ゼミや講義でも交流しています。もっと日本のことを語れるよう、世界からの日本に向けられた関心と対話を重ねたいと考えています。

ボガジチ大学(トルコ・イスタンブール)で開かれた日本研究カンファレンスのようす