執筆者・論考紹介
社会イノベーションの方法と実践

『新しい公共』概念とその政策形成過程を振り返る──阪神・淡路大震災から民主党政権に至る道筋

松井 孝治

松井 孝治

総合政策学部 教授

何を論じたのか

「新しい公共」という概念の生成と政策形成過程、そして参加型民主主義への展望を視野に入れた当事者としての「手記」です。超高齢社会が到来し、単身世帯が飛躍的に急増する中、我々が直面する様々な課題の中で、社会として幸福を追求するためには、公助のみに期待するのも、自助を強調するのも非現実的です。自助、互助、共助、公助のバランスを整え直し、官のみが公共分野を仕切るという価値観から、人々や企業・学校・病院・福祉施設・NPOなど多様なアクターが他者や社会を支えるために幅広く連携協力する「新しい公共」という考え方が必要です。本稿は、阪神淡路大震災でそのことを痛感した筆者が、SFC関係者など様々な論者とその概念をいかに論じ発展させてきたかを振り返るとともに、参加型民主主義の一形態として今後を展望したものです。

執筆者の研究紹介

筆者は、1990年代以降、官僚、議員、SFC教員時代を通じて、一貫して、内閣と行政各部の政策形成の在り方、政治と国民の距離、国会審議の活性化、政官関係、公務員制度の在り方など、広義の統治機構改革に関心を有し、活動してまいりました。SFCの教員としては、これらの統治機構、統治の課題を可能な限り国民の視点から捉えなおし、政治家や行政官のみならず、広く社会に問題提起を行うことを心がけております。こうした活動に当たっては、我が国の歴史と伝統、大衆文化への理解が不可欠と考え、研究会においては、政治や行政のみならず、我が国の大衆文化研究の視点も加味しております。

筆者の最近の言論誌投稿から。

筆者の最近の言論誌投稿から。