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SFCの革命者(アーカイブ)
2009.06.26

日本の政策決定 プロセスを変えたい。

SFCの革命者

日本の政策決定 プロセスを変えたい。


神保 謙
総合政策学部准教授

9.11以後の日本の安全保障の行き先を提示する神保謙准教授。
安全保障分野の若き研究者として世界を舞台に活躍する神保准教授に、
政策決定プロセスのあるべき姿を聞いた。

シンクタンク時代

革命者ワシントンの政治プロセスでは、シンクタンクやアカデミズムの場において、安全保障や国際関係に関する議論が、実際の政策と非常に近い距離感と緊張感をもって行われています。しかし、日本の政治プロセスを考えると、「政」「官」の関係の中で政策が決定され、知的コミュニティーの議論の場は政策から非常に遠かった。そこで、日本にもアメリカのような土壌を作りたいと思い、シンクタンクに入りました。予定調和的に政策が決定されるのではなく、複数の選択肢をシンクタンクをはじめとした場でオープンに議論し、政策を決定していくということを実践したかったのです。シンクタンクには6年くらいいて、いくつか大事な政策決定の場にも関わらせてもらいました。ちょうど景気の悪い2003年には企業のファンドレイズも経験して、企業からお金をもらって法人を経営していくのがいかに難しいかを学びました。

より政策決定に近い場所としてのSFC

革命者シンクタンクでは充実した日々を送っていたのですが、「シンクタンクの経営」と「研究」が分離出来ないということを強く実感し、次第に「経営者」としての立場が求められる状況を感じるようになりました。そして、本来的な意味で政策決定のプロセスに関わるシンクタンクを求めて、SFCへ転身しました。核兵器や日米同盟の長期的な役割、テロリズム等に国際社会はどう対応するべきなのか、というような課題は、必ずしも政府だけが議論すればいい問題ではなく、多くの学者がアイデアを出し合って、政府との関係性の距離を縮めていくということが重要になってきています。アカデミズムとポリティクスというのは、世界的な現象として、どんどん接近して来ています。大学も無縁ではなく、SFCもこのような土俵に上がり、教員や、職員や、学生たちが一体となって社会を変革する事を目指しています。

安全保障の枠組みが変わった

革命者9.11以降、世界の安全保障は大きく変わりました。それまでのような国家同士の対峙であれば、国際法を適用しやすく、また国際的な危機や戦争は明らかに目に見えやすいカタチでした。要は国と国との関係ですから、一方が手を出したら、もう一方が手を出す、だから手を出さないでおこう、という抑止の関係が成立しやすかったのです。しかし、国家とテロリストの関係で考えると、手を出されたら反撃するという場合にどこに反撃するのか、何が戦いの終わりなのかということがはっきりしない世界になって、抑止が通用しない。また高性能な兵器が拡散して、武装勢力やテロリストがエンドユーザーとして能力を獲得する現象も顕著です。このように、国際関係論が積み上げてきた安定のロジックが通用しない世界になっているのです。国家と人、国家とモノ、国家と企業というアシンメトリーな関係での相互作用が、どのように世界に影響を及ぼしているかを考える必要が出て来ました。この安全保障のパラダイムが大きく変化した世界で、根本的なロジックを見直し、どのような安全保障の政策を提示出来るか、というのが最大の研究課題なのです。

革命者
私の理想は、アカデミズムの人たちがどんどん政府に入っていって、実際の政策に携わり、またSFCに戻ってくるような日本型の回転ドアを作ることです。安倍政権のときに、国家安全保障会議(NSC)を作ろうとしていました。結局法案は提出されなかったのですが。NSCは日本の外交・安全保障政策の司令塔となることを目指していました。その事務局スタッフとして、民間人、例えば大学教員などが官邸に入る。そこで日本の中長期的なストラテジーを策定したり、国際的な危機に直面した場合の政策決定のアクターとなるわけです。でもそれはアカデミズムと官僚の世界が、互いを尊重し真摯に歩み寄ることによって初めて実を結ぶものだと思います。日本はあと一歩のところまで来ているのです。

多領域の研究者たちから受ける刺激

革命者インターネットのインフラストラクチャーを作る研究室があり、そのインフラを使ってコンテンツを流し込む研究者がいる。私が日本・中国・韓国での三ヶ国の遠隔授業を行えるのも、そういった相互作用のあるSFCだからこそではないかと思います。また、既存の学部のように研究者同士がお互いに近い分野の研究で知識や経験をシェアできる、という環境も良いのかもしれませんが、様々な研究領域の研究者達が同じ環境に身を置いていると、実は遠いと思っていた研究領域が自分の研究のヒントになったりすることがあるんです。例えば、私がテロリズムや核兵器等、安全保障の世界で人を脅かす脅威がどのような空間をもって我々に迫ってくるのかということを言っていると、環境情報学部の空間デザインの先生は、空間という概念が歴史的にどう人間の中に位置づけられたか、という話をはじめるんです。同じ“空間”とか“環境”という概念を使うもの同士が、全く異なる人生の背景の中で語り合うことによって、これだけ多くのことが吸収し合えるということは、非常に刺激的で面白い。そういう化学反応がSFCにおける大きな利点ではないかと思います。

神保 謙(ジンボ ケン)
JIMBO, Ken

専門分野は、国際安全保障論、アジア太平洋の安全保障、東アジア地域主義、日本の安全保障政策。1996年慶應義塾大学総合政策学部卒業、1998年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、2003年同研究科後期博士課程修了(政策・メディア博士)。東京財団研究員ほか多数兼務。また、これまでに経済財政諮問会議21世紀ビジョン「グローバル化ワーキンググループ」専門委員、日本国際問題研究所研究員、日本国際フォーラム研究主幹などを歴任している。

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(掲載日:2009/06/26)

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