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SFCの革命者(アーカイブ)
2009.03.31

宇宙のルールは 誰が決めるんだろう。

SFCの革命者

宇宙のルールは 誰が決めるんだろう。


青木 節子
総合政策学部教授

法律なんて嫌いだった

青木節子教授凄く法律が嫌いでした。自然科学や文学は真実の探求や、創造の喜びがあるのに、法律は既存のルールを学ぶだけと感じていました。それが変わったのは、法律に「争いが生じたときに、みんなが最も不満がない形で解決するための新しいルールや、ルールの作り方自体を見つけ出す」面があることに気づいた時です。カナダのマッギル大学に行ったときには、日本で研究者になろうとは思っていませんでした。カナダ政府の学位奨学金は、英米の奨学金と違って、学位を取るまで何年でも奨学金を出してくれる。ただし必ずカナダ研究をしなければならない縛りがあって。その研究分野の中に、当時北米では、カナダにしかなかった航空宇宙法研究所での「宇宙法」の研究があったわけです。

確立されていない面白さ

青木節子教授
宇宙法を作るのは国連の宇宙空間平和利用委員会(現在、加盟国は69カ国)で、これまで、宇宙条約、月協定など5つの普遍的な条約を作ってきました。でも、まだまだ確立されていない部分が多くある。例えば、よく話題になる月や火星の土地の販売について。宇宙条約では、「国は天体を領有できない」と規定しているに過ぎないので、国ではなく私企業は天体を所有できると主張して、ビジネスを展開しています。しかし、民法の基本として、占有していないものを所有することはできず、所有していないものを販売することはできないので、土地の登録証を買う消費者が、お遊びと認識して買っているのでなければ、これは詐欺になります。現在は、その点が自明です。しかし、実際に民間人が、民間ロケットで簡単に月に行き、土地を占有できるようになると、やっかいな問題となりかねません。だから、このような企業をもつ国-特にアメリカ-は、国内で取り締まる必要があるでしょう。

ソフトローという考え方

青木節子教授宇宙空間平和利用委員会では、すべての加盟国のコンセンサスにより条約を採択するので、加盟国が増えるにしたがい、条約を作成することは困難となります。事実、1979年に採択された月協定が最後の条約です。その後は、条約のように正式に国家に義務を課すものではなく、勧告的な意味しかない国連総会決議や、さまざまな宣言、原則などが作られるにとどまっています。これらは「正式な条約」(ハードロー)に対して法ではないけれど、無視をすることも困難なルールという意味で「ソフトロー」と呼ばれることがあります。国際社会において、国家のありかたの多様性がますます際だち、また、国際組織、NGO、多国籍企業などさまざまなアクターが重要になるにしたがい、「ソフトロー」の重要性はますます高まることでしょう。すでに、宇宙だけではなく、漁業、貿易、人権、環境など、多くの分野で「ソフトロー」は「ハードロー」との相互補完関係で、より公平で持続可能な秩序づくりに貢献しています。

宇宙法模擬裁判日本大会総合優勝

青木節子教授宇宙模擬裁判は国際宇宙法学会(IISL)が主催する、世界でも最も権威ある宇宙法の模擬裁判大会です。日本国内での試合において、過去の優勝校は法学部(05年試行大会:東京大学、06年第一回大会:京都大学)だったのですが、2007年には、SFCが法学部でもないのに優勝しました。これは何よりSFCの「問題発見、問題解決」の精神の賜物だと思います。新しい法分野で未確立の部分が多い宇宙法は、なにが問題かを措定し、望ましい回答の選択肢を提案することが求められている分野ですし、模擬裁判も、同様に、論点(=問題)の発見、明確化と他者を納得させる回答の組立が命だからです。

知見の広がる土壌

青木節子教授航空宇宙法だけではなく、海洋や軍備管理、環境問題なども含めて、既存の法律の解釈というよりは、新しい秩序のありかたを学生とともに学んでいきたい・・・それがSFCに来た理由です。また、SFCは、分野のちがう研究者同士が自由に共同で問題をみつけ、解決のために協力できる場所だと思ったからでもあります。たとえば、衛星から観測した地球データをより効果的に使って、環境保護や資源探査、国家間の信頼醸成措置などを向上させようというときに、衛星データ解析技術、環境政策、国際法、安全保障論など、それぞれの専門家がコラボレーションして、何が問題かをつきとめ、解決策を練る・・・そんな自由な環境がSFCにはありますね。SFCは、素晴らしいキャンパスです。

青木 節子(アオキ セツコ)
AOKI, Setsuko

1983年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1985年、同大学院法学研究科修士課程、1990年、マッギル大学法学部航空・宇宙法研究所博士課程修了。1993年、Doctor of Civil Law (D.C.L.) (法学博士)。立教大学法学部助手、防衛大学校社会科学教室専任講師、同助教授、慶應義塾大学総合政策学部助教授を経て2004年より同教授。総務省情報通信審議会委員、厚生労働省厚生科学審議会臨時委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員等。主著:『日本の宇宙戦略』慶應義塾大学出版会/『ふだん着のモントリオール案内』晶文社。

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(掲載日:2009/03/31)

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