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SFCの現場
藤田 護研究会

2020.09.01 / Latin America, Spanish, Ainu, Linguistic Diversity

藤田 護研究会

SFCにおける活動の中心は「研究会」。教員と学生が共に考えながら先端的な研究活動を行っており、学生は実社会の問題に取り組むことによって高度な専門性を身につけます。

藤田護研究会の特色

使用順①:藤田先生.jpgのサムネイル画像元々私が領域横断的な研究を手掛けているという経緯もあって、「 南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究」と「SFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ」という2つの研究会を開講しています。 アイヌ語の研究会もスペイン語の研究会もかなり広いテーマ設定となっています。それぞれの言語以外の人文的・社会的なテーマに関心を持っている学生の参加も認めているので、学生たちの研 究テーマを見ると、研究会で設定しているテーマよりさらに広くなっています。したがって、輪読の文献やアイヌ語の実習など、共通の素材をみんなで持ち、それを軸に議論を通じて「共通の問題関心の軸を育てていくこと」を重視するようにしています。

ユニークな研究や学生の例

使用順②:藤田先生.jpg

南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究
言語と性の多様性についての研究です。スペイン語には名詞をジェンダーで分ける男性名詞、女性名詞があります。そういう文法項目があること自体が性差別ではないかという議論が広がっていて、スペイン語圏ではスペイン語の話し方や書き方を変えていこうという動きが起きています。このように変化してきた言葉づかいを「包摂的な言葉づかい」と言いますが、今年9月に卒業したばかりの学生は、そのスペイン語の包摂的な言葉づかいを学部生に教えるための研修教材を作るという卒業プロジェクトを行いました。将来のスペイン語教育の土台になるような教材ができたことはとても嬉しいことです。

SFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ
この研究会には、アイヌの出身であり、積極的に社会で活動している学生がいます。これ
は、これまでの日本社会でそれほど当たり前のようにできたことではありません。慶應義塾大学にアイヌ出身の学生が入ってきたことはとても新しいことだと思っています。したがって、ここで展開されていく一つひとつの活動がこれまでの日本社会にはなかったことなので、思いついたことはどんどんやることが大事だと思い、応援しています。
 他にも、アイヌの人たちがたくさん住む北海道の二風谷に行って、博物館で1学期間インターンをしたり、何度もインタビューをしに通ったりする学生もいます。そもそもアイヌ出身の学生がSFCに入ってくれたのも、この活動を通して現地の人たちとの関係が築かれたことがきっかけだったので、学生たちにはとても感謝をしています。

研究分野におけるホットなニュース・話題との関連性

南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究
「多言語のSFC」というスローガンが創設以来ずっとありますが、私はスペイン語の中の多様性、スペイン語圏の中の多言語性を大事にできるような人材を育てていきたいと思っています。実際にケチュア語やバスク語を学んでいる学生も数名いますし、バスク語についてはSFCと神奈川大学と上智大学を跨いだ勉強会が開催されています。一つの大学だけでは人的リソースが不十分ですが、大学間での連携をSFCが牽引できると面白いと思います。

SFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ
アイヌの年配世代や北海道に住んでいる和人(アイヌ以外の日本人)の人たちが子どものころ、周囲にはまだアイヌ語で話していた人たちがいたはずで、今アイヌ語が日常生活で使われなくなったとしても、アイヌ語が話されていた時代の人々の話し方、佇まい、風景など記憶のようなものは残っているはずです。今の若い方たちが自分がアイヌであることやアイヌ語に対してどういう意識を持っているのかなどについて、丁寧に耳を傾けて相手の言葉を聞こうとするような試みが生まれていくとよいと思っています。今の時代に私たちが生きているからこそ、できることや聞ける話があると感じています。

進路

卒業生を送り出した歴史がまだ浅いのですが、研究領域を組み合わせて先端的でオリジナルなテーマを手がける学生が出てきてくれるのは、とても面白いことですし、SFCで教える一つの醍醐味だと言えます。例えばスペイン語×防災という研究領域を組み合わせて学んだ後に、防災関係のコンサルに進んだ学生がいます。この学生は、大木聖子先生の研究室にも所属して防災の教育やワークショップの運営方法を学び、ペルーのアンデス高地へ行って一学期間フィールドワークをしました。進路は様々ですが、これまでこの研究会に参加した全ての学生が重要な足跡を残していってくれました。この研究会で経験した思考のノウハウがこの先の人生に繋がっていってくれたら嬉しいです。

藤田 護研究会の魅力  ― 学生の目線から ―

雰囲気や特徴

使用順④:スペイン研究会集合写真.jpeg

南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究
研究は主に個人研究という形を取っていますが、「個人研究を個人で終わらせない」という先生のご意向から、各々の個人研究についてみんなで考えるカルチャーがあることが特徴だと思います。そのため、ディスカッションが活発に行われ、時間を忘れて議論することが多々あります。
さらに、サブゼミ(研究会以外の勉強時間)では、アカデミックなスペイン語、文法などを学んでいます。
基本的に研究会に所属しているほとんどの人がスペイン語のインテンシブⅡを履修していますが、社会言語学・ダイバーシティについて研究していた人も在籍しています。スペインやラテンアメリカに興味がある学生が集まっていますね。

使用順③:アイヌ研究会集合写真.jpgSFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ
学生同士が教え合ったり、プレゼンテーションを行うなど、学生主体で活動が行われています。
決まったテーマではなく自分の関心のあるテーマで研究することができます。研究会に入る条件は「藤田先生を楽しませること」。実際に研究会テーマはアイヌの家族間継承、多民族、沖縄の民族、小説、ジブリについてなど多岐に渡ります。
加えて、先生と学生たちが双方向で学んでいるというのも大きな特徴です。藤田先生ご自身が学生から積極的に学ぼうとする姿勢をお持ちで、学生と一緒に様々な分野を探求していらっしゃいます。
アイヌ語を学ぶ時間では、私(関根さん)が講師を担当しています。アイヌの集落で生まれ育った経験を生かして、私の地元で合宿を行った際にはアイヌの文化を伝え、ゼミ生に体感してもらうことを大切にしています。

得られるスキル、入ってよかったと思う瞬間

南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究
輪読によって文献を読み込む力がつきました。特にスペイン語の文献を読むことが多いので、スペイン語の語学力が向上しましたね。また、輪読後に先生によるフィードバックがあったり、いただいた質問を基にディスカッションをしたりするので、みんなで考えを深める力も身についたと思います。
研究会の規模は小さいですが、だからこそ藤田先生を含め色々な人と深い繋がりができるのはこの研究会の良い点だと思います。さらに、ニッチなジャンルの研究であるため、誰も気付いていないような新しい発見と出会えるのもモチベーション向上になっています。
私はパナマに留学していた経験から、ラテンアメリカの研究をしています。たくさんの文献を探しても見つからないときは、私の研究が誰も気づいていないことを研究していることがわかり、やる気につながっています。

SFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ
まず、アイヌ語を勉強して習得することができます。
また、意見交換をする機会が多く、自分が伝えたいことをなんとか言葉にして伝えなければならないので、伝えようとする姿勢や、考え方を相手に納得させる力が身に付きますね。そのため、「何かを伝えたい」「社会に対してメッセージを発信したい」と思い、卒業後も自分自身の想いやメッセージを伝えることのできるような仕事につく先輩が多いです。

研究会活動の一つである輪読では、みんなで本を読んで意見を出し合い、共に考え抜きます。少人数の研究会なので全員が全力で考えないといけません。その中で、気づきや新しい発見を得られた瞬間は特にやりがいを感じる楽しい瞬間です。

研究会分析シート

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藤田 護 環境情報学部専任講師 研究者情報データベース
藤田 護研究室

メッセージ

もっと深い多様性の世界へ!

多言語主義はSFCが創設以来培ってきた大切な理念で、いわゆる「外国語大学」や「外国語学部」ではないのに、ことばを真剣に、深く、実践的に習得し、研究できる場があるということは、SFCが持つユニークな特徴だと思います。SFCの言語コミュニケーション教育では、「外国語」という言葉を使わないようにしています。この多言語主義をもう一歩進めて、世界の全ての言語が対等に生きられ、それぞれの言語による表現が躍動する世界へと向かう、そういう研究を後押ししていきたいと思っています。言語とそのように関わることは、必然的に社会を、そして人間を見る目も変えていくことになります。そういう「センシビリティ(感性)」を持った仲間が、どんどん加わって、繋がってくれることを期待しています。(藤田 護先生)


「ラテンアメリカからの新しい思考」

多くの方にとって馴染みがないであろうラテンアメリカやスペイン語。未知なる世界の文化や歴史、思考は皆さんにとってきっとワクワクするものだと思います。自然溢れるキャンパスと実践的な講義、個性豊かな教授陣と学生が揃うSFCで、問題意識を持って一緒に研究してみませんか。(研究会「南からの思考―スペイン語圏の社会と多言語主義の研究」総合政策学部3年東瑞玲さん)

「SFCでできること」

私は「なんとなく面白そうだから。」という理由でSFCを受験しました。志望理由はそのような曖昧なものでしたが、今は個々の意思が尊重され、学業と個人活動の両立が可能な場所は、SFCだからこそであることを知りました。そんな環境下で仲間とともに自分の役割を模索し、充実した大学生活を送ることができ、SFCに入学できたことを嬉しく感じています。(研究会「SFC kotan―アイヌ語の現在とアイヌ語の口承の物語の世界へ」総合政策学部3年関根摩耶さん、総合政策学部3年田原悠平さん)

取材・制作協力:桑原武夫研究会PR班