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SFCの現場
2015.09.01

中室 牧子 研究会「教育政策の経済学的分析」

総合政策学部 准教授 中室牧子

専門分野:応用経済学 教育経済学

さまざまな分野に適用できる
「経済学」の手法

経済学は、限りある資源を適切に配分して、有効活用するために最適な学問です。特に最近は応用経済学といって、経済学の手法を利用して教育、医療、労働などの課題を解決しようという研究が盛んになってきています。

当研究会では、どのような教育方法が最も効果的なのか、それぞれの教育方法に必要なコストと効果の関係はどうなっているか、などの課題を、代表性のある大規模なデータを用いることで、実証的に分析しています。科学的な手法で収集した大規模なデータを用いることはポイントの一つで「エビデンスベースト」と呼ばれています。

「エビデンスベースト」の考え方は医療の世界でも取り入れられている普遍的な考え方です。勘や個人的な経験ではなく、大規模なデータに基づいた診断や治療を行うことで、医療の現場が変わるといわれています。

経済学にもこの「エビデンスベースト」を取り入れることで、科学的なデータに基づいた提案や判断を行うことが可能になります。
例えば、少人数学級の教育効果はほんとうに高いのか、というテーマに対しては、教育効果は高いが、費用対効果は低いという結果がエビデンスベーストの研究から明らかになっています。

目に見えない教育の「効果」も
教育経済学を使えば「見える化」できる

当研究会の研究テーマは「教育経済学」です。教育経済学とは、教育政策の費用対効果を科学的なデータに基いて分析し、評価する応用経済学の一分野です。

研究テーマは多岐にわたっています。例えば、全国学力テストで秋田県は常に上位に入る理由は何か。就職活動で内定が決まる学生と、なかなか内定されない学生の違いは何か。開発途上国ではどのような教育を行うことが最も効果的か、などバラエティーに富んだ研究テーマに取り組んでいます。

教育分野では、なかなかデータを集めにくいという実情があります。しかし、就職活動で内定が決まる学生と、なかなか内定されない学生の違いは何かというテーマでは、学生が自ら、学内の就職活動生にインタビューをしてデータを集めるなど、自分の手でデータを集める工夫をしています。

現在取り組んでいるテーマの例では、教育の価値を親と子に伝えることの学力への影響、があります。これは教育の重要性を具体例を示しながら説明することによって、親と子の学習に対する意欲と学力の変化を調査するものです。同様の調査がマダガスカルで行われましたが、当研究会では東北の自治体と協力して追試を行っているところです。調査はまだ途中ですが、興味深い結果がでてきそうだと期待しているところです。

科学的な調査によるデータに基づいた 「エビデンスベースト」であることが重要

「エビデンスベースト」では、科学的に意味のある、全体を代表する平均的なデータを用いることが重要です。そうすることによって、ある教育方法の成功例が、ほんとうに他にも適用できるのか、効果があるのか、といったことが分かるようになります。

残念ながら、日本ではまだ、エビデンスベーストの考え方が根付いていないのが実情です。また、経済学の世界は欧米が中心で、主要な論文もほとんどが英語です。そのため、エビデンスベーストの教育経済学を研究するためには、英語力が必須になります。当研究会では、計量経済学の英文の問題を入会試験として課しています。計量経済学では数学も重要なので、当研究会では数学力も重視しています。

あまり日本では普及していないとはいえ、エビデンスベーストの教育経済学は、これからの日本の教育政策を決めていくうえで必要不可欠な学問です。

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