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SFCの現場
2014.04.01

メタボローム解析技術プロジェクト

わずかな唾液や血液から、がんなどの病気を診断!
「メタボローム解析」による次世代の健康診断を開発。

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先端生命科学研究所 所長
環境情報学部  教授
冨田 勝

診断が難しい“うつ病”の治療にも、メタボローム解析は活用できる。

わずかな唾液から、高い精度でさまざまながんを見分け、1滴の血液からは肝臓がんなど9種類の肝臓の病気を判定できる。そんな画期的な技術を研究・開発しているのが『メタボローム解析技術プロジェクト』です。
メタボローム解析は、血液や尿、唾液などに含まれるアミノ酸や糖などの代謝物の成分を分析する技術のこと。病気をもつ患者と健常者。それぞれの細胞がつくるアミノ酸や糖などの代謝物をこの技術を使って比較し、分析することでさまざまな病気を見分けることができます。
従来の分析では数十種類が限界でしたが、メタボローム解析を使うことで、数百種類もの代謝物を一度に計ることに世界に先駆けて可能にしました。
例えば、1滴の血液から9種類の肝臓疾患をほぼ100%判明することが可能。また、すい臓がんや口腔がんなどは、わずかな唾液でもある一定の精度で判別でき、実用化の一歩手前まできています。さらに、診断が難しいとされる病気“うつ病”の治療にもメタボローム解析を導入。
うつ病の患者の血液を分析すると、病状がひどくなるほど、濃度が下がる代謝物があることがわかり、現在はその数値を、うつ状態の目安として患者のカウンセリングに活用しています。
今までは、医師の裁量だけで処方箋の量が決められましたが、数値が明らかになることで、客観的なデータから薬の量の調節が可能に。さらに、自分のうつ病の症状を他の人にも説明できるという大きな利点にもなっています。

メタボローム解析で、食材のおいしさを追究することができる。

さまざまな病気を解明しているメタボローム解析ですが、環境や食品などの分野にも応用されています。例えば、山形県・鶴岡の特産物の一つ「だだちゃ豆」をメタボロームで解析すると、他の枝豆に比べて、2APという旨味成分が特に多いことが判明。これは、香ばしいポップコーンの香り成分と同じもので、現在は、栽培の仕方で、「だだちゃ豆」の、この成分量がどのように変化するのかを検証しています。この他にも、新しいお米「つや姫」などの山形の名産品を分析したプロジェクトが進行中。おいしい食材・食品を多くの人々に届けられるように、メタボローム解析が、さまざまなプロジェクトで導入されています。

本当のブレイクスルーは、最初はほらに聞こえるもの。
そこから実現可能なものだけが、新しいものを生み出せる。

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あらゆる分野の問題解決に活用されているメタボローム解析の技術が生まれた背景には、斬新で、ユニークな考え方がありました。それは、すべての生体試料から膨大なデータを集め、コンピュータを駆使して解析するというメタボロームの手法で、従来の生物学とは正反対のアプローチでした。「そんなやり方では、何もわかるわけがない」。開発した当初は、冷ややかな反応が大半を占めていました。しかし、私たちは信念を曲げずに研究を続け、2011年に肝臓疾患の目印となる特定の物質を発見。その物質の濃度の違いによって、9種類の肝臓疾患の判別を突き止めたのです。本当のブレイクスルーは、最初はほらに聞こえるもの。そこから実現できるものが新しいものを生み出していくのです。
2012年4月、新たなビックプロジェクトがスタートしました。それは鶴岡市民1万人の血液と尿のメタボローム解析を行い、25年にわたって代謝物と健康状態の変化を追跡し、生活習慣病などの病気の予防に役立てようという試みです。今までに4000人分の血液と尿を採取。私たちが本気で取り組みたいのは、病気の早期発見です。あらゆる不可能を可能に変える。次世代を見据えた挑戦は、今始まったばかりです。