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SFCの現場
2013.07.25

金子郁容研究室

研究領域キーワード

ソーシャルイノベーション、コミュニティソリューション、社会起業家

どのような研究をしているのですか?

金子研究会では、従来まで、社会解題を解決するのは「政府か市場か」という議論であったのを、三つ目のソリューションに注目しようと考えます。研究会で学ぶ問題解決のキーワードとなるのが、ソーシャルイノベーションとコミュニティ・ソリューションです。ソーシャルイノベーションとは、社会性と事業性を兼ね備えつつ、社会課題にアプローチする手法です。新しい発想(=イノベーション)によって経済的リターンとともに社会的リターンを生み出すソーシャルベンチャーから、コミュニティによる教育、医療、福祉の改革など、さまざまな新しい取組について学んでいます。「輪読」と「個人研究」2つを軸とした、理論と実践の研究会です。

研究室の一日を教えてください。

毎週月曜日の5,6限に授業があり、例年20人程度が所属しています。授業ではまず、文献や論文に関するディスカッションを行い、問題解決のための理論を学びます。履修生は3,4人の輪読グループごとにグループワークを行い、発表の準備をして研究会に臨みます。それと並行して個人研究を行い、学んだことを実践へとつなげていきます。個人研究では、たとえば、地方の小さい都市の公立中学校が地元の進学塾と提携して、土曜日の午後、中学校の校舎を使っての「補習授業」を、有料だがかなり低い料金設定で提供するという取組みについて個人研究をしている学生がいます。営利目的の学習塾が公立学校の教室を使って企業活動をすることについては、他の自治体では強い反対もあります。この市では学校、教員、教育委員会、保護者が一致して指示して、よい取組が行なわれています。なぜこのようなアレンジが可能になったか、なにか課題はないかなどが研究課題となります。その他にも、環境、地域コミュニティ活動など、履修生個々人の興味や問題意識を基に研究テーマを設定し、フィールドワークなどにより調査を行います。履修生同士、お互いに相談やアドバイスをしながら研究に取り組んでいます。

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先生はどんな方ですか?

とてもスマートな方です。学問の第一線で活躍される研究者であり、かつその実践者でもあります。研究会で扱う文献は、社会学や経済学、制度論など多岐に渡りますが、これらがソーシャルイノベーションという理論に結び付いていく過程を理解すると、ただただ「すごい」と思う日々です。お忙しい中でも、学生一人一人と真摯に向き合って下さり、時間を惜しまず丁寧に指導をして下さいます。学生の熱意には倍以上にして応えて下さる先生です。一方で、日常の何気ないエピソードを気軽に話して下さる楽しい一面もあります。話題が豊富で、ディスカッションの最中にも笑いが広がるようなこともしばしばです。履修生がみな「先生のような大人になりたい」と憧れるような存在です。

研究室ならではのキーワードはありますか?

「研究はできることをやる。」個人研究のフィードバックの際に先生がよくおっしゃる言葉です。研究は興味や問題意識から出発しますが、現実的に、学生個人が扱えるテーマの大きさや出来る調査は限られています。研究会では、少しずつ研究のテーマを絞っていき、やりたいこととできることの区別をつけること、そしてそこから研究として設計していく過程を学びました。この研究活動において先生がポイントとして大切にしていることは、「現場に行くこと」です。現場の声を聴くことで、新たな疑問や自分の興味の対象、研究の方向性などが明確に見えてくるからです。まさに理論と実践で、自分で考え、行動する力の両方が身に付いたと思います。

リポーター 黒田 有紀さん(総合政策学部4年)

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(掲載日:2013/07/25)