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おかしら日記
2023.12.26

知る、理解する、思い描いて行動する|メディアセンター所長/総合政策学部准教授 宮代 康丈

メディアセンターには学生の頃からお世話になっているけれども、ただの利用者としてだけでなく、運営側としても関わる立場になると、新たに知ることは格段に増える。立場が変わるから知ることが増えるだけではない。変化する状況に応じて、湘南藤沢メディアセンターはどのように変わらなければならないか、あるいは変わってはいけないか。このことを考えるために、理解しなければならないことも増える。専門的な知識やスキルを持ち合わせていない身にとって、できることは限られている。それでも、今どのようなことが行われているか、またこれまでにどのようなことが行われてきたかということを、事務の方々に教えていただいたり、さまざまな資料に目を通したり、都合の付く時にイベントを見学したりしながら、少しずつ知り、理解しようと努めているというのが、所長役を任された10月から今までの私の状況である。

過去を知らなければ現在は理解できず、現在を知らなければ過去を理解しようとしても無駄だろう。これはある歴史家の言葉を粗くまとめたものだが、さらに付け加えれば、過去も現在も理解していなければ、未来を思い描いて行動することはできないだろう。行き当たりばったりでは困る。

今年10月に発行された『慶應義塾図書館史II』によれば、湘南藤沢メディアセンターは、SFCが創設された1990年4月にΣ館でサービスを開始し、翌年4月にΜ館に移転した。慶應義塾の各キャンパスの図書館組織は、現在はどこもメディアセンターと呼ばれるが、その先駆けをなしたのは湘南藤沢メディアセンターである。情報のマルチメディア化が進む未来を見据え、「図書館機能と情報の発信基地としての機能を合わせもつ施設」を指すものとして、メディアセンターという名称が選ばれた。この名称が図書館について用いられたのは、塾内のみならず、日本で初めてのことであったという。他キャンパスのことも含めて、湘南藤沢メディアセンターの歩みを教えてくれる『慶應義塾図書館史II』は、KOARA(慶應義塾大学学術情報リポジトリ)にアクセスすれば、誰もがいつでもPDFファイルをダウンロードすることができる(※1)。このようなことができるのは今でこそ珍しくないが、1990年頃はまだ現実味のあることではなかっただろう。KOARAの公開開始は2006年11月である(略称は変わらないけれども、当時の正式名称は「学術情報リポジトリ」ではなく「学術情報アーカイブ」)。メディアセンターという名称の選択一つを取ってみても、社会の未来像と施設の使命がそこに込められていたことがわかる。

SFCの創設当時、湘南藤沢メディアセンターが担う役割は、1)情報システム、2)学術情報、3)教材システムという三つのものであった(『未来を創る大学 : 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)挑戦の軌跡』)。情報システムは、現在は湘南藤沢情報センター(KIC)の管轄になっている。その他の任務は今も大きくは変わらないが、種々の面での更新は日々続けられている。今秋に刊行された『MediaNet』第30号(※2)では、湘南藤沢メディアセンターでの社会的公正や環境問題への取組みが紹介されている。当館では、視覚障害を持つ学生に向けた「AT ROOM」の設置や、入館資格のある方への子供同伴の許可、節電のための空調設定などが進められている。また、今春も実施された新入生歓迎イベント「カモからの挑戦状」では、日本語話者以外の学生も参加できるような工夫が凝らされた。これも公正さのための手立てであると言ってよいだろう。

11月25日・26日にSFCで開催された万学博覧会では、開館以来初の試みとして湘南藤沢メディアセンター内の自由見学を実施した。3Dプリンタの体験コーナーや、博士課程の大学院生からなる WRC(ライティング&リサーチコンサルタント)のブースも設けた。両日とも、看護医療学図書室の見学者を含めて、多くの人々の来館に恵まれたが、その中には、キャンパス周辺にお住まいと思われる方々の姿も見られた。藤沢市在住・在勤の方への資料閲覧・貸出のサービスは1991年9月から行われているけれども、万学博覧会への参加は、改めて、地域とSFCが交わる道辻の一つに湘南藤沢メディアセンターがなりうることを示したように思う。

大学の施設であるメディアセンターに限らず、図書館一般に対して、社会的公正や地域活性化への貢献を期待する声が高まっていると聞く。それらの価値が実現されるキャンパスや社会の未来を思い描きながら、図書館でもあり情報発信基地でもある湘南藤沢メディアセンターは行動している。

※1 慶應義塾図書館史II編集委員会編『慶應義塾図書館史II』、慶應義塾大学メディアセンター、2023年(最終アクセス日:2023年12月26日)
※2慶應義塾大学メディアセンター『MediaNet』No.30、2023年(最終アクセス日:2023年12月26日)

宮代 康丈 メディアセンター所長/総合政策学部准教授 教員プロフィール