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おかしら日記
2022.01.25

また海底ケーブルの話|常任理事/政策・メディア研究科教授 土屋 大洋

トンガの海底ケーブルが切れた。前にも書いたように、私は海底ケーブルが好きだ。もう四半世紀以上、海底ケーブルのことを考えている。

海底ケーブルって何ですか、どうやって修復するんですか、日本でもこういうことが起きますか。トンガのケーブルが切れた後、いくつか取材を受けた。

トンガの海底ケーブルがつながったのは、9年前の2013年だ。TeleGeography社が提供する海底ケーブル地図によれば、トンガの国際回線はフィジーとつながる827キロメートルの1本だけだ。これが切れてしまったのだから大変である。

とはいえ、トンガのケーブルは2019年1月にも切れている。外国船の錨がケーブルに当たったと考えられている。通常、海底ケーブルの修復には2週間かかるというが、この時は12日間で復旧した。

切れたケーブルの復旧には手間がかかる。保管してある予備のケーブルをケーブル敷設船という特殊な船に積み込み、現場に向かう。そして、大きな釣り針のようなもので海底を探りながら切れたケーブルを探す。見つかったらそれを船上に引き上げる。錨が届く深さだから、それほど深くなかったのだろう。それを船の上でつなぎ直す。髪の毛より細い光ファイバーを1本、1本つなぎ合わせ、金属やポリエチレンの外装をし直す。うまくつながっていることが確認できたらそれを海底に戻す。

今回はどうだろう。どれくらいの深さで切れているのかが問題だ。数十から数千メートルの深さだとしたら、もっと時間がかかる。海底にも火山灰が溜まっているだろうから、ケーブルを探すのにも手間取るかもしれない。そうすると2週間以上かかるだろう。

すでに始まっているように、人工衛星を使えば最低限の国際通信は回復できる。しかし、海底ケーブルが提供する通信量にはかなわない。日本の場合は、国際通信の99%は海底ケーブルを使っている。トンガの場合も大半はケーブルだったろう。それを全部人工衛星でカバーするのは無理だ。

日本でこのようなことが起きるのか。自然災害によって日本の全てのケーブルが失われることはないだろう。地震や津波、海底火山の噴火ということであれば日本全国で同時に起きるとは考えにくい。日本には20本以上の海底ケーブルがつながっている。

2011年の東日本大震災の際には、多くのケーブルが切れた。しかし、ほとんどの人はその事実を知らなかっただろう。千葉や茨城につながるケーブルの多くが切れたが、米国やアジアとの通信トラフィックは志摩につながるケーブルを使って維持された。

無論、想定外のことを想定するのが東日本大震災の教訓だ。何らかの要因でケーブルの多くが同時に失われれば、高速取引を行う金融などには影響が出る。そうしたことが人為的にも行われないようにしなければならない。

エリオット・アッカーマンとジェイムズ・スタヴリディスによる小説『2034 米中戦争』(二見書房)は、海底ケーブルが失われたときに起きる最悪のシナリオを描いている。ケーブルが人為的に破壊可能だと言って来た私でさえも、このシナリオは行き過ぎだと思うのだが......。

ともかく、海底ケーブルがつながっていないと、今日我々が享受しているような情報通信サービスは使えなくなる。オンライン授業もままならなくなる。そのありがたみを再認識させられた。

トンガの人たちに早く海底ケーブル接続が戻り、平穏な暮らしが戻りますように。

そして、受験生の皆さん、オミクロン株の感染が広がる中、とても大変な思いをしながら来月を待っていることと思います。慶應義塾大学とSFCはできる限りの対策をして入学試験に備えています。春になったら皆さんとキャンパスで会えますように。

土屋大洋 常任理事/政策・メディア研究科 教授 教員プロフィール