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おかしら日記
2020.09.01

時空を共有すること|常任理事/総合政策学部教授 國領 二郎

NHKで放映されたオンライン七夕祭の番組をとても誇らしく見ながら、あのお祭りが、SFC以:外のバーチャル空間で行われたら、どんなだったのだろうなと考えていた。あるいは、リアルタイムでやらなかったらどうだったのかな、と考えていた。

恐らくはあんなに盛り上がらなかっただろうなと思う。バーチャルでもいいから、友達と共有しているあの場所に同じ時間に集えることの価値が大きかったし、あの場所を意識して、あの時間に集ったことが、場所はグラフィックで、人はアバターだったとしても大きかったのだろうと思う。時空間の共有が人と人との間に共通の文脈(コンテクスト)をつくり、そのコンテクストがあるから、コミュニケーションが促進され、つながりが生まれてくるのだ。

時空間の共有の持つ意味については研究としても(特にどんなタイプの遠隔教育が有効かという研究で)興味を持ってきたのだが、現在は、キャンパスを開けて欲しいという声と、感染リスクを極力コントロールしたいと思う声のはざまで、何とか学生諸君に素敵なキャンパスライフを味わってほしいという文脈で切実な問いになっている。物理的に場所と時間を共有することの本質的な意味を抽出しながら、今や贅沢になってしまったその経験を有効に提供したい。たとえば、いったん物理的な場所でコンテクストが共有できたら、次からはバーチャル空間で濃密なコミュニケーションが成立するようになるのだろうか?もしそうならば交代でも場所を経験してもらって、次からはバーチャルにできる。それでいいのだろうか?コロナ禍の中でさまざまに試みられている取り組みから生まれるエビデンスを虚心坦懐に分析して、何が有効なのかを見つけ出していきたい。

それにつけても、新型コロナウイルスという突然ふってきた難題にひるまず、力を結集して運営してきた学生諸君の主体性、創造性には敬意を表したい。テレビでインタビューされた学生に「世代交代」だと喝破されて正直ドキリとしたが、嬉しくもなった。SFCが確実に新しい時代に向けて歩みを進めている。古い常識にとらわれずに、その力が大きく伸びる環境を維持していきたいものだと思う。

國領 二郎 慶應義塾常任理事 / 総合政策学部教授 教員プロフィール