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おかしら日記
2016.04.11

井下理先生の思い出|桑原 武夫(総合政策学部教授)

本年1月4日、井下理名誉教授(元総合政策学部教授)が逝去されました。
 井下先生とは、文学部の学生だった時、三田キャンパスでお会いしたのが最初です。担当されていた「社会心理学」を受講させていただきました。丹念に諸研究が配置された授業で、社会心理学という領域の面白さに引き込まれました。先生は、当時から井関利明先生(当時文学部教授、元総合政策学部長、現名誉教授)のブレーンといった存在で、私も大学院時代からは数多くの調査研究プロジェクトをお手伝いさせていただきました。井関一家の基本動作のひとつに「苦笑されるようなダジャレを言う」というのがありますが、井下先生もしっかりと受け継がれており、微妙な空気に包まれながら作業をした場面をいくつも思い出します。
 SFCにはオープンと同時に総合政策学部の助教授として着任されました。SFCの最も重要な看板のひとつであった「学生による授業評価」を主導され、日本の教育界に大きな影響を与えた立役者でした。その後すぐに立ち上げられた「キャンパスライフ満足度調査」プロジェクトにおいても、SFCの革新性を実証的に描き出し、初期のSFCの評判を大いに高めて下さいました。教授法研究の大家でもあり多くの業績を残されています。グループワークを用いて受講者の気づきを促し、授業の満足度を高めるという卓越した授業の行われ方には、目を見張る思いでした。SFC名物のグルワの伝統は、井下先生が築いて下さった基礎の上にあります。
 数々の場面で活躍の中、2003年4月からは湘南藤沢中・高等部長も兼任され重責を担われました。退任された直後の合同教員会議で開口一番「ただいまーっ!」とご挨拶されたことを昨日のことのように思い出します。その朗らかさからかえって、激務でいらっしゃった様子がうかがわれました。
 先生のご病気が進行していらっしゃったことに、私たちの誰もが気づかなかったこと、まだまだご指導いただけると思い込んでいた中で、このような早いお別れを迎えてしまったことが悔やまれます。4月17日には「井下先生を偲ぶ会」が催されます。井下先生の思い出を語り合い、あらためて先生への感謝の気持ちを捧げたいと思います。