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おかしら日記
2015.04.01

「SFC開設25周年に思う」|高野 仁(湘南藤沢キャンパス事務長)

 SFCは、1990年4月に開設した。1期生を迎えてから26年目となる。26年目ではあるが、1年を経て1周年なので、本年度が25周年の記念の年度となる。
 
 年度をとおして、SFCの様々なイベントや行事に「25周年記念」の冠をつけて、お祝いをしようという趣旨なので、学生団体で自分たちのイベントにこの冠をつけたければ、事務室の学生生活担当に企画を相談していただきたい。
 
 こうした周年事業は、組織の発展を目的とし、未来に向けての戦略策定やその戦略に必要な基盤整備を行なうきっかけとするものである。
 この基盤整備にはさまざまな側面があるが、その中でも、私が大事だと思う事業について本稿で触れておきたい。
 
 それは、周年事業を迎える組織の歴史的振り返りと、そのための資料収集事業である。
 
 組織が歩んできた道のりの評価は、今後の組織の歩みを策定する上で大切な作業である。過去に学ぶ姿勢があってこそ、未来をみることができる。
 そして、そのためには、年数を経るに従って散逸してしまいがちな資料収集が大事な事業となるのである。
 
 みなさんも研究活動を行なう際に、過去の資料にあたることが多いと思うが、こうしたものがきちんとアーカイブされ、研究に使えるよう整っていないとどれだけ不便かは実感するところだろう。
 だからこそ、我々も、きちんと収集し、整理し、アーカイブして、次の世代が使えるようにするのが、大学という機関に籍を置くものとしての使命だと思うのである。
 
 私は学生時代に奈良時代の政治制度や法制度を学んだ。奈良時代の資料で現存しているものは限られているが、遺跡から出土する木簡などは、当時をなまなましく伝える貴重な資料である。
 時には、正史に関しての説を裏付ける発見もあれば、時には説を見直さなければならない発見もある。
 木簡は、意図されて残ったものではないからこそ、独特の価値を生んでいると思う。
 我々も、できるかぎりは、偏りのない資料収集をこころがけたいと願っている。
 
 さて、そういうわけで、私が以前携わった後世の資料にと意識して行なった業務について紹介をしたい。
 
 SFCには、「SFC内のコミュニケーションを図り、SFCの活動を記録し、他キャンパスにSFCの活動を知らせる」という趣旨で発行されていた「パンテオン」というニュースレターがあった。
 過去形で「あった」と書いたが、今もSFC教職員のメールレターという形では存続している。紙媒体では開設の1990年から12年間続き、36号まで発行された。
 
 創刊号をひもとくと、相磯秀夫初代環境情報学部長が、このパンテオンは「SFC小史」となるであろうことと、いずれ新しい情報メディアに掲載されるようになるであろうことを予測している記事がある。
 現在、メールレターとなっている点では、この予測はあたっている。
 
 私は、このパンテオンの編集を1995年~1997年まで担当していた。業務を引き継いだときに、発行回数が間遠になっていたのを再活性化させようと尽力した3年間であった。
 
 私がこだわったのは、相磯学部長の言われていた「SFC小史」として資料としての役割と価値をもたせたいということであった。しかし、このころ、事務室総務担当の仕事は職員の人数も少なく、担当範囲も広く、多忙をきわめていた。そこで、企画にはかかわるものの編集と発行の仕事を慶應義塾大学出版会に委託しようと考えた。資料として保存がしやすいように、少し値段がはっても適切な紙を使うことで、出版会としても採算性が取れるということだったので、手続き的にはSFCの広報委員会での承認をとる段取りまで進んでいた。
 
 ところがである。広報委員長からは「高級な紙は使わなくていい」と言われ、委員からは「読み捨てられる手軽さが良いのだ」と言われ、計画は流れてしまった。私の忙しさが軽くなることはなかった。編集の際にいつも二つ返事でOKを出す委員長のことだから賛同してくれると思っていたのが間違いだった。要は事前説明という根回しが足りなかったのだ。
 
 現在、当時のパンテオンの機能は一部はメールレターに一部はSFCの公式Websiteに移っているようではある。このWebsiteのまさに皆さんが今目にしている「おかしら日記」なども、パンテオンの企画でもおかしくないような記事だと思う。
 
 相磯学部長はパンテオンの第30号記念企画において、「SFC小史」としての実績の一端を評価する文を寄稿されているが、同時にWeb化が未達成なことにも触れられていた。
 現在のメールレターとしてのパンテオンは、着任者と退任者の紹介と一言を紹介するにとどまっており、その他の連載記事や企画記事、ニュース的記事などは、形をかえてWebsiteに移ってしまっており、その体制は13年に及ぶ。
 相磯学部長の予測は、ふたつともに実現するには実現したが、今回の25周年事業としての「25年史的振り返り」という作業の中では、メールレターとなって、小史的役割が縮小したように感じる。
 
 もし、あの時、業務委託が実現していれば、今でも紙媒体のパンテオンが続き、パンテオンからSFC小史が連綿と見えていたかもしれないというのは、所詮、繰り言なのかもしれない。
 
 資料として、過去の紙媒体パンテオンに当たる作業をしていると、紙媒体には紙媒体なりの良さというものが伝わってくる。
 媒体によって、それぞれのメリット、デメリットがあることは充分に認識はしている。パンテオンが紙媒体から媒体を変えたことで、得たものと失ったものがあることは、考えてみるべき問題だろう。
 
 後世への資料としての意図は、媒体の変更とともに形を変えてしまった。しかし、これを機にWebのコンテンツやメールレターというデジタルデータをどうアーカイブして、資料として使いやすくするかというテーマも見えている。
 
 25周年事業において、アーカイブ事業の重要性を日々感じるのである。
 
 最後に読者のみなさんにお願いがある。
 
 SFC開設10周年の際、SFC10年史作成のために資料の収集とアーカイブ作業を大々的におこなったが、そのあとの資料収集は充分でないという現状がある。
 開設以降の資料はもちろんのこと、特に2000年以降から現在にいたるまでのSFCにとって貴重と思える資料をお持ちの方は、ぜひ資料提供をお願いしたい。
 
 写真、動画、ポスター、冊子、SFC関連の各種記事など、資料提供してもよいという方は、下記までご一報いただきたい。
 
(連絡先)湘南藤沢メディアセンター マルチメディアサービス担当
 E-Mail sfc25-mc@sfc.keio.ac.jp
 電 話 0466-49-3435