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おかしら日記
2006.04.13

世界に注目されるモデル社会を作ろう|國領二郎(SFC研究所長、総合政策学部教授)

1980年代、日本の勢いが良かった頃、世界に「21世紀は日本の世紀になる」などとおだてられて調子づいていた時期があった。ところが90年代に入って長期の金融混乱の中で、世界は日本をただの劣等国だと思い、日本も自信喪失して内向き志向になってしまった。いまは世界の関心の的は中国やインドで(ほとんど)誰にも21世紀が日本の世紀になるとは思ってもらえなくなってしまった。別に21世紀を我が物にしなくてもいいのだが、くやしいので、どうやったら「やっぱり21世紀は日本の世紀だ」と言わせることができるか考えてみたくなる。

取るべき戦略は割合はっきりしているように思う。物質的な生産量や軍事力を拡大することで達成された20世紀アメリカ型の繁栄にかわる、21世紀型の繁栄のあり方において日本が世界を先導するモデルを示すことだ。かつて世界中の発展途上国が、日本を経済的苦境から抜け出すモデルと仰いだように、20世紀モデルの矛盾に悩む世界中の国が日本に範を求めるようにするのだ。

例えば高齢化しても活力が失われないユニバーサル社会システムの構築などというのは開発目標になるだろう。専門家ではないので、うっかりしたことは言えないが、高齢化というのは経済が発展して豊かになった社会に共通の現象のようだ。先に到達した日本がいち早く道具や社会制度のユニバーサルデザイン化を進めて、高齢者でも能力が発揮できるモデルをつくる。すこし現世的なことを言うと、高齢化社会に適合したテクノロジーや商品を用意しておけば、将来中国やインドのニーズに応えられるようになる。高齢者社会化という日本にとって、未来を危ういものに見せている問題への明確な解決の道筋を見せることで、世界に希望を届けることができ、自らの繁栄にも導けたら気分は良いに違いない。整備したブロードバンドネットワークがその解決方法(ソリューション)構築の上で大きな力になるだろう。

他にも狙いたい分野がいろいろあるが、こんな能天気なシナリオは、自ら実現に向けて動くのでなければ、単に予想したり、議論したりしているだけでは意味がない。世界にむけて発信するためにも、まずは我々自身の手で、SFCの周りに、世界中から見学者が訪れるような、環境と生活者に優しいモデル社会を構築したい。総合政策、環境情報、看護医療と、SFCには21世紀社会を構築する上で必須の知を生み出す力をもった研究資源が集積している。これを地域社会に具体的に適用して、なるほどこれが未来だ、と思えるような社会を作りたいものである。

(掲載日:2006/04/13)

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