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おかしら日記
2005.08.29

わすれもの、美しい眺め|熊坂賢次(環境情報学部長)

オミクロンとイオタをつなぐ通路から、富士山をみましょう。もちろん5階からの景色でないといけません。時間は、日没の直前。真っ赤な空を背景に、真っ黒な富士山が天に向かって立ち、裾は厚く優雅にひろがる姿をみせます。しかし考えてみれば、10年ぐらい、その景色をみてない。もしかしたら、障害物があるかもしれない。なにしろ僕の研究室は4階だから、そんな眺めは期待できない。その1階の違いが雲泥の差なのです。

夜遅くなれば、なんたって外周道路から鴨池をはさんで、オメガからSFCの全景を眺めることです。帰宅時にちょっと遠回りして車でそこを通ると、いい気分になります。もう少し仕事をしようかな、と思うことでしょう。しかし自分の研究室に戻れば、汚いだけのミクロな世界なので後悔します。やはり帰りましょう。

ファカルティから、ランチのとき、ぼーっと外を眺めていると、ふと、緑の自然の豊かさに気づき、いい景色だな、と感動します。やはり15年もたつと、樹木が見事に育ち、そんなリアルな緑に囲まれているだけで、このキャンパスは美しい、と思います。しかし45分もたつと、せわしなく自分の部屋に戻り、さあ、また仕事だ、と自分に檄を飛ばします。やれやれ。

真正面の石段を登りながら、メディアセンターに抜ける景色を見上げると、SFCの建物の迫力に圧倒されます。しかし石段の幅が、人の歩幅と微妙にずれているので、いつも下を向いて歩かないと危険なので、一瞬しか見上げることができません。だからこそ、その景色は威厳を放つのでしょう。うまい仕掛け?です。転ばないように、注意しましょう。

SFCの眺めは、外をみても、外からみても、かなりなものです。美しくて優雅で、荘厳で華麗で、豊かで威厳にみちています。そんな眺めを支えるのが、ダイナミックで、しかもかなり汚らしい研究生活なのかと思うと、不思議でなりません。鳥瞰的な眺めを忘れて、忙しなく自分の研究に没頭して、そんな眺めに感動する余裕なんかないのですが、しかし、忘れてはいけません、こんな知的な活動があるから、SFCの眺めはどこまでもパワフルで美しいのです。

中高の建物と大学院棟の間で、SFCの敷地の境界からちょっと外れたところに、浅間神社の小さな社があります。そこはちょっと異境で、願い事があったら、お参りにいくべきです。今年1月、環境情報学部の受験者数の拡大をお願いしに、といっても、本音は減少傾向を食い止めたいという必死の思いで、お願いに行きました。なんと去年よりも100人増加という快挙?を実現しました。やはり最後はここだな、と確信しました。

(掲載日:2005/08/29)

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