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おかしら日記
2008.02.28

おかしら日記|山下香枝子(看護医療学部長)

私の小さな楽しみの一つに本棚や資料の整理があります。「なぜ楽しみなのか?」などと考えたことはありませんが、次の理由によるのかなと気がつきました。

その一つは、「教育の本当の成果」は、5〜10年後を気長に待たなければ見えてこないものがあるのに対して、本棚や書類の整理は、作業した分の成果が直ぐに結果となって現れ、雑然としていたものが一見「すっきり」となり、「片付いた、よくやった」と確認できる点です。時にはその逆もあります。資料整理の途中で、忘れていた文献や資料に出会い、記憶のかなたに潜在していたものが一瞬にして蘇がえり、「次回の授業の導入に使おう」などと思ったときには、新たな資料の探索や分類が始まり、机上や本棚の混沌の世界はさらに広がり、その中を右に左に遊泳するということになります。しかし、この遊泳も楽しみです。

もう一つの楽しみは、大学の研究室で帰宅の準備をしながら手にした資料や、持ち帰って‘読んでこよう’と取り出した本と本の間に隠れていたノートや、ふと開いた本の中にはさんであったメモなどが、一瞬にして「過去の事実」の中へと私を導いてくれることです。「こんなことをしてはいられないのに・・」と独り言を言いながら、いつの間にかゆったりと椅子に腰を下ろし、資料やメモを夢中になって読みふけり、時の経つのを忘れてしまいます。

最近のエピソードを一つお話ししましょう。それは、過去の学生達の「よせ書き」の束を再発見したときのことです。多くは、すんなりと読めるのですが、月日の流れとともに文字が消えてしまい、読みにくくなっているものもあります。そうなると、読みたいのが私の心情のようでして、斜めにしてみたり、明かりに近づけたり、天眼鏡で覗いたりと、筆圧を頼りに、その学生のことをあれこれと思い出しながら、学生が伝えようとしたことを必死に探りはじめます。

  • 一番始めの実習で、不安や緊張があったときに先生方のコンビに、本当に救われ、・・カンファレンスでも自分の多くの気持ちを言えるようなリードで、成長できたと思います。
  • 実習中は大変お世話になりました。特に患者さんのことで私がつらいときに、先生がいて下さり、とても救われました。先生に戴いた滅菌ガーゼは宝ものです(笑)・・。
  • 研究室に行くといつも、温かく迎えて下さり、いつも居心地がいいなーと思っていました。先生のお話にはいつも新しい発見があって、とても楽しかったです・・。
  • プロジェクトの中で先生の‘お茶でもしましょうか’が大好きでした・・。
  • 実習中は辛いこともありましたが、ものすごく勉強になりました。‘科学的根拠’しっかり身につけます・・。
  • 私も患者さんのことを一番に考えることのできる大らかなナースになりたいと思います。
  • これからもいつまでもきれいな先生でいて下さい(笑)。

など等。

これらの学生の言葉は、ときに私を慰め、時に厳しく反省を迫り、難しい課題を投げかけます。しかし、何よりも、遠い過去、近い過去の学生達の大きな成長を感じさせてくれる機会となる資料整理・本棚の整理は、私の小さな楽しみの一つとなっています。      

(掲載日:2008/02/28)

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