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おかしら日記
2010.11.22

天高く、出会いの秋|太田喜久子(看護医療学部長)

秋は一年で一番好きな季節、青い空が澄みわたり白いひつじ雲が天の高さを教えてくれる。

今年の紅葉は、猛暑と秋の長雨との具合がよく、ひと際美しいそうである。以前、宮城県鳴子温泉郷に調査活動で数年通っていたことがあり、紅葉のあまりの美しさに、車を運転していて何回も目を奪われそうになった。広葉樹と針葉樹が混ざり合う山にさまざまな赤、黄、緑の錦織り成すさまは、陽の光をあび、空の青さに一層ひきたてられ輝いていた。こんなに美しいところに暮らせたらどんなにすてきだろうと、冬の厳しさも知らずに思ったものだ。年によって微妙に色彩の輝きが異なることもよくわかった。

そして今年、まだ紅葉が始まる前の嵐の最中、子犬が我が家にやってきた。小さくて片手に軽々と乗るくらいの大きさで、あまがみもかわいい、タロの弟分として迎えたツカサ。タロの子どものころを知らず、どんなにかかわいかったにちがいないと常々思っていたのだが、ついに、子どもの時から育ててみようという決心に至った。

はじめ1-2日おどおどしていたが、日に日に鳴き声も大きくなり、甘え声、切迫した声がはっきりしてきた。その主張の強さ大きさと、そばに寄って見るあまりの姿の小ささとのギャップに戸惑うくらいである。住人は何をしているのか、実によく見ている。1週間くらい過ぎて、突然思いがけない床上浸水があり、住人がパニック状態で水をかき出したり、物をよけたり、掃除したりと大騒ぎしたことがあった。大変な緊迫感の中、ゲージの中でじっと鳴かずに耐えていた。

我を通したいツカサと、こちらの生活のペースに合わせてもらいたい住人と、まさに闘いの日々である。もう少しで我が家に来て1カ月、ショルダーバックから顔を出したまま、はじめて近所の散歩をして桜の紅葉を眺めた。食べっぷりに生命力が溢れ、噛む力は増し、素早く跳ねまわる体を抱き上げると片手にかかる重みが確かなものになってきた。ツカサ肥える秋である。

(掲載日:2010/11/22)