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おかしら日記
2012.10.01

おかしらとオリンピック:パラリンピックとMEET THE SUPERHUMANS|高木安雄(健康マネジメント研究科委員長)

ロンドン・パラリンピックは“MEET THE SUPERHUMANS”を大会テーマにかつてない盛り上がりで、開会式前日までにチケットは全体の96%が売れたという。テレビ映画・スーパーマンは空を飛び、機関車を止める超人的なパワーで社会の悪と闘って人気を集めたが、パラリンピックでは障害を抱えながらも過酷な練習で鍛えたプレーで観客の感動を呼んだのである。

もともとパラリンピックは、第二次大戦の負傷兵のリハビリのために英国で始まったという。今回の大会にもイラクやアフガニスタンで負傷した元兵士が参加しており、米国チームは選手227人のうち20人は現役、または退役軍人だという。「国のために戦った兵士たちが、もう一度パラリンピックで国のために戦おうとしている」と新聞は報じているが、リハビリのためのモチベーションとはいえ、再び国家を背負う戦いに参加するとは複雑な心境となる。

何を以って、SUPERHUMANといえるのか、オリンピックの陸上男子400㍍に参加した義足ランナーのオスカー・ピストリウス選手に対して、「マテリアル(道具)ドーピング」と問題視する意見も寄せられた。そのオスカー選手がパラリンピック陸上男子200㍍で敗れると、勝利したアラン・オリベイラ選手を「義足が長すぎる」と非難したのである。アラン選手は「私の走りはトレーニングの結果、パラリンピックの歴史に名を残せて幸せだ」と語ったが、障害のクラス(重症度)の判定と道具ドーピングの課題解決はパラリンピックの今後の発展に避けて通れない。

障害者のための補装具は、個人の障害の種類・程度に合わせて製作されるため少量生産となり、低価格ではできない。もっとも大きなユーザーは軍隊といわれるのはパラリンピックと似たところがあり、アメリカで開発された脊髄損傷で歩行困難な障害者を歩行可能にするロボット・スーツは1,100万円して、毎年、維持・管理に80万円かかるという。しかも一般用に販売するとなると、政府のきびしい審査を通る必要があり、開発者はスマートホーンやジーンズのようになって、スポーツ用品店で販売されるのが夢だという。道具ドーピング以前にこうした補装具を購入できる障害者はどれくらいいるのか、何をもって代表と名乗れるのかなど、今回のパラリンピックは社会的な注目を浴びたがゆえに、障害者スポーツの裾野の拡大とそのための社会的支援、ルール作りなど多くの課題を教えてくれたである。

(掲載日:2012/10/01)