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SFCスピリッツ
2007.01.31

"マスメディア この妙なる世界"在日華人メディアで日中相互理解をすすめる

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”マスメディア この妙なる世界”在日華人メディアで日中相互理解をすすめる

中国映画の重鎮、謝晋監督と(2006/12/15)
中国映画の重鎮、謝晋監督と
(2006/12/15)
遠藤英湖さん
(在日華人新聞社「東方時報」記者、1997年総合政策学部卒業)

私は現在、東方時報という在日華人メディアで、唯一の日本人記者として仕事をしています。仕事内容は主に日中関係や、在日中国人向け・中国に関心のある日本人向けの取材で、官公庁・企業などの取材や、国会議員・芸術家・企業経営者などのインタビューを行ってきています。

よく“マスメディアの影響力の大きさ”がいわれますが、本当にその通りだと日々実感します。例えば、日中間で問題が起きると、偏った悪い側面ばかり強調されがちですが、良い部分の報道があまりなされないと、誤解から互いのマイナス感情を増幅させてしまうというメディアの怖さがあります。多面的に正しい情報やメッセージを伝え合う日中双方向の作業が不可欠だと認識しています。

一方で、やっぱりメディアの力はすごいと思うこともあります。今後の外国人政策について取材したときのことです。もともと、日本の出版社がその方の論文を掲載し、それを見た在日華人メディアがその方の本を出版し、私はまたその本を読んでその方をインタビューしました。その記事を基にその方がまた講演をされ、中国メディアが一斉に報道し、中国全土に日本からのプラスのメッセージが伝わっていったことがあります。こういう時はメディアの仕事の面白さとやりがいを強く感じます。

記者は個別のインタビューをすることも多いのですが、同じ相手の方でも記者次第で話の内容やレベルが全く違ってきてしまいます。きちんと事前準備をした上で、いかに相手の方の信頼を得て、内にあるものを引き出せるか。そして、それをいかに読者の心の琴線に触れられるような記事として表現できるか。「オーケストラの指揮者と似ている」と思いつつ、より完成度の高い取材成果を目指して日々努力しています。

この頃「先が見えないから人生は面白い」と思えるようになりました。最近は映画関係の取材も多く、10代の頃からファンだった香港のトップスター、劉徳華(アンディ・ラウ)さんや中国映画の重鎮、謝晋(シエ・チン)監督をインタビューできたのですが、当時は将来このような機会があるとは思いも寄りませんでした。特に謝晋監督が取材終了を告げるスタッフを制して「構わない、私はまだ話し終わっていない。私はまだこの記者に答えたい」とおっしゃり、ずっと答えて下さった時の感激は今でも忘れることができません。

中国語をはじめ、SFC時代に学んだ全てのことは何ものにも代え難い一生の財産として、今でも私に大きな影響を与え続けています。先の展開がわからない人生を楽しみつつ、SFC生らしく、今後も日中相互理解をすすめるため頑張っていきたいと思います。

(掲載日:2007/01/31)