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SFCスピリッツ
2007.11.28

異邦人の眼差しで

SFCスピリッツ

異邦人の眼差しで

井本由紀さん
オックスフォード大学大学院社会人類学科博士課程
オックスフォード大学日産現代日本研究所研究員
2004年総合政策学部

社会人類学というのは、複雑な歴史を背負う学問である。私は、現在所属しているオックスフォード大学社会人類学研究所の”the ancestor room” と呼ばれる薄暗い地下の応接間に足を踏み入れるたび、壁にずらりと並ぶ歴代オックスフォード人類学者の肖像画から、冷ややかな威圧感に背を押されるのだ。それは大英帝国の植民地時代の産物としての社会人類学の過去、伝統と「知のための知」を重んじながらも変革に迫られているオックスフォード大学の現在の葛藤、を象徴しているからなのだろうか。

このような瞬間に、SFCとオックスフォードの環境のあまりにもの差に驚かされるのである。やれやれ、「未来からの留学生」として「現在」どころか一気に「過去」の世界に来てしまったのか・・・と。

私は現在、日本の英語教育の社会人類学的研究を行っている。今年はフィールドワークのため日本に一時帰国しており、早期英語教育の現場で教師として、参与観察を行っている。日本社会では常識として当たり前に行われていることに、社会人類学者が「異邦人の眼差し」を向けることによって、日本人の英語に対する固定観念を解いていけないだろうか。オックスフォードの「歴史と伝統」とSFCの「変革と未来」を融合させた手法を模索しつつ、今後も研究に励んでいきたい。

(掲載日:2007/11/28)