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SFCスピリッツ
2008.03.05

信念を貫く

SFCスピリッツ

信念を貫く

開発中の光パケットスイッチ今泉英明さん
東京大学国際・産学共同研究センター特任助教
1999年総合政策学部、2001年政策・メディア研究科修士課程、
2005年政策・メディア研究科後期博士課程

どのような分野でも「先を見通す」能力は必要とされるが、誰もが自分の予想を否定する状況もよくある。こんな時にそれに固執することは、バランスを欠く判断の原因となり問題となることもある。しかし研究の分野では、信念を持って、そういう尖った姿勢を貫くことも必要となる。

私の恩師は学部/大学院を通じて村井純さんである。村井さんは「全ての通信はインターネットによって置き換えられる」と信じて昔から活動を行っている。私の学生時代にあっても、そんなことを本当に信じている人はそんなにはいなかった。今は村井さんが信じてきた世界を皆が信じるようになった。 

私は今「光ネットワーク技術が既存インターネット技術を置き換える」と信じて研究を行っている。残念ながら、信じている人はあまり多くない。

インターネットは今後、情報流通インフラとして更に発展して行くだろう。FullHD/4Kデジタルシネマなど高精細なコンテンツも増え、大容量な通信路は不可欠な要素である。しかし今後は、消費電力も見逃せない要素になる。

最新の研究報告(OFC2007)によると一本の光ファイバで25.6Tbpsもの帯域を提供できることが分かっている。FTTHで提供されている 100Mbpsの25.6万倍である。データを中継するルータでは、電気処理に基づくデータ転送処理を行うが、現状最高で転送容量は92Tbpsである。ファイバ4本分に満たないにもかかわらず、消費電力は水力発電ダムを一個分使う。ランニングコストは非現実的なものになるだろう。

光を電気に変えず光のまま転送すれば、光ファイバが提供する大容量性を低消費電力で活かすことができる。しかし実用化に向けた技術的なハードルは非常に高く、消費電力もどれだけ下がるかも明らかでない。

現在は、将来のインターネットの姿を想像しながら、光インターネットアーキテクチャの検討、光ルータの実現に向けた基礎的な検証や実験を行っている。 SFCを離れ、全くの別分野に足を踏み入れたため、学ぶことが非常に多い。しかし新しいことを学ぶのは非常に楽しい。三年目にしてやっと目に見える成果が出てきたように思う。

私の研究姿勢は、SFCで学んだ「自分で問題発見、自分で解決」に基礎を置くところが大きく、SFCの理念は自分にとって大きなものだったと改めて思う。この理念を持つ人材が更に輩出され、多様な分野で活躍されることを期待しています。

http://www.mlab.k.u-tokyo.ac.jp/

(掲載日:2008/03/05)