おかしら日記

がんばって、ね。

熊坂賢次
環境情報学部長

ホリエモンは、ちょっとドン・キホーテのようだけど、メディア王のフジテレビに果敢に挑戦している。彼の本の題名はそうだけど、まあ欲しいのはお金だけじゃないだろうし、なにか新しい世界を創造したいのだろうから、ちょっと味方したい気分になる。ミカドの肖像を抱いた堤王国は本当にあっけなく崩壊してしまった。あまりにも古い時代の精神をそのまま引き継いで経営するという時代錯誤の幻想のなかにいては、どうしようもなかったのだろう。単純に時代に乗り遅れたのに、権力が誇示できたという事実に驚くばかりだ。戦後の大衆の消費生活を支えて、大量消費社会のスーパーヒーローだった中内ダイエーもあっという間に消滅し、その最後の牙城だった福岡ダイエーホークスも、孫正義という時代の寵児のカリスマの前に、素直に委譲が成就し、あっという間に福岡ソフトバンクホークスになってしまった。スポーツエンターテイメントは、これからの狙い目なのだろう。プロ野球球団を最初に射止めたのは三木谷・楽天なんだけど、今ではホリエモンがそのきっかけだったという事実も忘れて、楽天イーグルスは、大黒柱の岩隈を宮内オリックスからもらって、しっかりと連日スポーツニュースを賑わせている。かなり得した。きっと彼はラッキーなんだろう。そして王者ソニーは、ここにきて、つねに最先端を走ることに疲れたのか、なんと外人の助っ人に席を譲ろうとしている。まあ、これもグローバル化ということで一応納得することにするが。対照的に、ゴーンさんは後継者として日本人を指名した。実力主義の結果なのだ。やれやれ、ほっとした。経済という世界は、こんなに激動の波にさらわれているのに、政治の世界は、水面化では妖怪が蠢いているのだろうけど、表面的にはまったりとしたままのようで、小泉さんはまだ安泰のようだ。のんびりした世界があると、それはそれか、という気分になる。人生いろいろなのだ。

SFCのこの一年を思い返すと、いろいろあったけど、どこまでホリエモンになれたのか、いつまで小泉さんでいるのか、いろいろあって、分からないことだらけだ。4月に新入生を迎えてガンバレと激励し、ここにきて卒業生を前に、社会にでたらなんでもいいから、もっとがんばれ、と檄を飛ばす。これしかないのか、と自分の想像力の乏しさに呆れるばかりだが、しかし贈る言葉なんて、そんな気持ちの悪いことはできない。まあ、「がんばって、ね」しかないなと思う。

頑張っている卒業生を紹介したい。二人ともあの楽天の成功を支えた立役者で、今の楽天があるのは彼らの力に負うこと大なのだ。その一人の小林正忠はSFC学生の社会貢献プロジェクトに多大な資金援助をしてくれており、卒業生による小林正忠教育奨励奨学金で、毎年、多くの学生たちがその支援を受けている。感謝だ。もう一人は本城愼之介で、この4月には横浜市立東山田中学校の校長先生になる。もちろん全国で最年少記録だ。この二人の凄いところは、楽天を成功に導いたことではなく、その次の社会のあるべき姿を描いて、すでに新しい行動を開始しているところだ。単純な資本主義の精神を超えた新しいネットワーク精神のもとで、新しい世界構築に向かって頑張っている。この新しい時代の精神は、自慢して言えば、SFCの根幹を支える倫理に強く関連しているのだ。SFCの倫理が新しい時代の精神を呼び起こしているのだ。だから、卒業生のみんな、もっとがんばれ、なのだ。

(掲載日:2005/03/10)

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