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キャンパスライフ

特定健康診査の受診率を上げるため、民間の自己採血検査を補完手段として活用する可能性をさぐる

田中 嘉博 Yoshihiro Tanaka
学部:総合政策学部3年
塾講師として社会人を経験し、その後SFCに入学

現在、日本の国民医療費は年間40兆円を超えています。厚生労働省はその対策の一環として、生活習慣病の早期発見・予防を目指して2008年から特定健康診査をスタートしました。 7割程度の受診率を目指していますが、残念なことに実際は4割台に過ぎません。 そこで私は、利用者側に立った視点でサービス内容を充実させている、民間企業による自己採血検査に着目しました。 特定健康診査の補完手段として利用し、受診率の向上につなげられないだろうかと考えたのです。 それができれば、国としては医療費の抑制になり、個人としては健康に長生きすることで人生の質を上げられるからです。
研究の第一歩として、自己採血検査を実施している足立区の調剤薬局に協力を仰ぎ、採血検査受診者にアンケートを行っています。 内容は、特定健康診査を受診しているか否か、また自己採血検査と特定健康診査それぞれについて、検査場所や実施時間などの利便性に関する項目も設けました。 今は調査を始めたばかりですが、いずれはこの結果を、何らかの形で特定健康診査の実施主体に還元したいと考えて研究を進めています。

民間企業の努力を手本に充実した健康診査を

この研究にたどり着いたきっかけのひとつは、父の病気でした。 日本の医療制度についていろいろ調べるうちに、医療費増大による国民皆保険制度の危機に気づかされました。 もうひとつは、SFCの卒業生でもあり、自己採血検査のパイオニアであるケアプロ(株)の川添社長が、ゲスト講師として授業で講義してくださったことです。 健診の重要性と課題を知り、研究の意義を見出せました。
公的機関による特定健康診査は、補助金が出るため負担は軽い一方で、休日や夜間は受診できなかったり場所が不便であったり、利便性には課題があります。 生活習慣病は、その名の通り生活習慣に起因しているため、医師の力よりも各人の意識を高め健診を受けることの方が大切です。 受診率を少しでも高めるために、公的サービスに民間サービスを関連づけて利用しやすい特定健康診査を実現する。 それは簡単なことではありませんが、なんらかの改善提案までまとめあげて、研究を完結させたいです。

なぜSFCに入り直したのか、入ってみてどうだったか

私は一度社会人経験を経てSFCに入学してきました。 なぜわざわざもう一度大学に入りなおそうと思ったのかというと、社会人として働いていく中で、自分は大学時代に、本当に世の中で役に立つことを学んでなかったのだということに気付かされたからです。 もう40歳を過ぎてこのまま自分の人生に疑問を持ち続けたまま生きていくよりも、思い切ってもう一度大学に入って、世の中で実際に役に立つ学問を学びたいと思いました。 そして今SFCに通っていますが、ここには意欲のある学生が多く、それぞれの問題意識や目標を持って学んでいます。 私が素晴らしいと思うのは、それらがこれからの現実の社会の課題と重なっていることです。 ここには世の中を良い方向に変えていくために自分にできることは何であるのかを考え行動できる人がたくさんいます。 そういう学生たちの中に混ざって、私もとても刺激的な環境の中で学んでいます。