MENU

体操競技選手の「進化」は、ヒトからサルへ
「積極的に退化」することではないか?

田中 麻奈美 Manami Tanaka
学部:環境情報学部3年
出身校:山陽女子高等学校(岡山県)

昨年行われた第46回世界体操競技選手権大会で、日本は37年ぶりに男子団体優勝を果たし、大きな注目を浴びました。世界を代表する体操選手たちは、自分の「上肢」をサルの「前肢」かのように使いこなし、身体のバランスを保つことで高度なパフォーマンスを可能にしています。このような人間離れした動きができる体操競技選手の、脳と身体をつなぐシステムは、一般人と比べてどのように違うのでしょうか?体育会器械体操部に所属する私は、日々の活動を通じて感じたこうした疑問を、神経科学的手法を用いて調べています。研究では、体操選手の「サルのようなパフォーマンス」は、サルから人間という進化の過程で、人間が捨ててきた神経経路の再活性化によるものではないか、つまり一個人にとって、体操競技選手として「進化」することのメカニズムは、逆に積極的に「退化」することではないかという仮説を立て、これを検証していきます。

競技者の感性と神経科学を融合して新しいスポーツ科学をつくる

研究においては、上肢を動かすために使われる神経経路が一般人と体操選手でどのように違うのかに着目しています。なぜなら上肢で全身のバランスをとるという行為は、一般人にとっては明らかに非日常的な行為であり、こうしたパフォーマンスを可能とするためには、体操競技選手の脳や身体にさまざまな可塑的な変化が起こっていると考えられるからです。脳の電気活動を計測する「脳波」、それに伴う血流応答を計測し視覚化する「機能的磁気共鳴画像法」、脳と身体の結合性を調べることができる「経頭蓋磁気刺激法」などを用いて、体操選手と一般人の脳-身体システムを比較・検証をします。
SFCでの学びは、多様性と柔軟性を持ち合わせており、且つ強いこだわりを持って深めるものでした。このSFCマインドをもって、私自身が16年間競技者として器械体操に向き合ってきたからこそ培った感性と、SFCでの研究会や授業を通して学んだ堅実な神経科学的手法を掛け合わせ、新しいスポーツ科学をつくりたいです。